SEのいうバッファとは

バッファの真意

見積りや作業スケジュールに際して、エンジニアやシステム会社から「バッファである」という回答を受けたことはないか。システム会社が言うバッファとは保険を意味していることがほとんどである。

不確実なバッファ

非エンジニアは見積りのバッファを聞いたときに、無駄なのではないかと感じる。「念のため」に必要なバッファは、裏を返すと知識がないから調べないと分からないので不安であるという意味である。知識があり、「念のため」が必要なければバッファはないと考えられる。

知識の不足

ほとんどのシステム構築プロジェクトは、バッファが多いほうが知識がないのに見積りが高くなるという矛盾が発生することになる。そう考えると「バッファ」とは「無駄」に聞こえるかもしれない。

本質のバッファ

さて、このバッファについて本来あるべき姿を説明する。本当にやってみなければ分からないといった高度な技術を使うときに、未知の領域に関するスケジュールの影響を勘案し、計画された期間のことをバッファと見るべきである。

まとめ

単なるシステム構築プロジェクトにおいて「無駄を削ればよい」というのは非エンジニアから見ると合理的でコストの軽減にもなる。しかし、研究開発分野において無駄を削ることは必ずしも合理的ではない。発想が乏しくなるからである。

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オフショア開発における契約形態の選択と、重要なポイント

オフショア開発には、受託開発、ラボ開発、そして折衷型の3つの契約形態が存在します。それぞれの契約形態には特徴と課題がありますが、最終的にここで「折衷型」と述べているものに集約していく傾向があります。

受託開発契約とその特徴

受託開発契約は、成果物の納品を約束する契約形態です。この形態では、事前に成果物の定義を明確にし、それに基づいて開発を進めます。受託開発契約はソフトウェア開発においてシンプルな形態と言えますが、成果物の定義を明確にすることは容易ではありません。実際の開発作業では、概念上の定義と現実の制約との間で調整が必要となる場合があります。

ラボ開発契約とその特徴

ラボ開発契約は、クライアントが直接開発者に対して指示を出す契約形態です。クライアントは開発者を拘束し、その時間を購入します。この形態は、日本のSES契約に近いものですが、ラボ開発では開発者は非常駐となります。時間単位で開発者の貢献を購入するため、時間の品質によって成果物の品質が保証されるわけではありません。開発者によって同じ時間内でも成果物の差が生じることがあります。

折衷型契約の意義とその特徴

折衷型契約は受託開発契約とラボ開発契約の折衷案として採用されます。この契約形態では、成果物の定義を柔軟にし、一定の作業時間も確保しながら、基本的にボトムアップ型で開発を進めていきます。オフショア開発においては、ビジネスモデルやクライアントの要求を理解し、中核的な開発人材(例えば、ブリッジエンジニア)を確保することが重要です。中核的な人材はクライアントのビジネスについて深い洞察を持ち、長期的な関係を築くことができます。このような中核人材をラボ契約で時間拘束的に確保し、プロジェクトが大型化したときはスポットで追加の受託契約を行い、人を追加で確保するというものです。

折衷案に収斂していく実際のプロジェクト

受託開発としてスタートしたプロジェクトでも、ラボ開発としてスタートしたプロジェクトでも、ベトナムでのオフショア開発が成功し長く続いている案件は、最終的に折衷案に収斂していく傾向があるようです。多くの場合は海外開発拠点は、日本の開発プロジェクトの外付け工場という位置づけになりますので、クライアントのビジネスをよく知った開発者を確保しつつスケーラビリティを確保するという両方が求められることとなり、このような形に落ち着くのでしょう。

もしこの形をゴールとするのならば、下記の2点に注目するのが良いでしょう。

(a) 長期契約が必要なこと:クライアントのビジネスモデルや独自の用語を理解し、本当に重要な要素を把握するためには時間が必要です。クライアントのビジネスに寄り添いながら開発を行うためには、最低でも1年以上の長期契約が必要です。

(b) ブリッジエンジニアを始めとする中核的人材の確保が大切であること:中核的な開発人材は、クライアントのビジネスをよく理解し、ビジネスの要件に応じて開発を進めることができる人材です。彼らは長期的なパートナーシップを築き、クライアントのビジネス成果に貢献します。そのため、オフショア開発においては、ブリッジエンジニアなどの中核的な人材の確保が極めて重要です。

オフショア開発においては、契約形態の選択とビジネス戦略の統合が成功の鍵となります。ビジネスの長期的な視点と中核的な人材の確保を重視することで、効果的なオフショア開発を実現することができるでしょう。

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技術的負債の返済方法

負債の本質

技術的負債には、設計負債やコード負債がある。金銭的な負債であれば借入金やマイナスの表記で数字化できるのだが、技術的負債においては数字化できないことがとても難しい点である。経営に関するほとんどのことは定量化や定性化が可能だが、たとえば企業創業者の発想する「野生の勘」を直接的に数字化できないように技術的負債も一筋縄では見える化しない。

設計時の対策

技術的負債の中でもコード負債については、システム開発の現場からよく発想されるリファクタリングや再構築などを行うことで比較的わかりやすい返済方法となる。知らない人が作ったプログラムや古くなったプログラムのバージョンなど、リスクを表現し対応することができる。何よりも最初の企画設計段階で負債が積みあがりにくい仕組みを考えることが大切である。

高負担な設計

技術的負債の中でも利息の高い負債が設計負債である。単体機能における設計であれば、モジュールごとの再設計によって返済が可能である。しかし、プログラムは複数のモジュールが絡まり合っていることがほとんどなので、複雑なオペになってしまう。また、稼働中のシステムにわざわざ再設計したプログラムを導入するリスクに対して、得れるメリットも少ないので見過ごされがちである。設計能力は例えば、紙というオブジェクトのメソッド(振る舞い)とプロパティ(保持する情報)を聞いて正しい答えが帰ってくれば多少安心であろう。紙の振る舞いは燃えるであり保持する情報は面積などがある。

根本的解決

しかし、技術的負債はこのように目に見えやすい設計負債やコード負債が致命的になることは少なく、やはりその上層でどのような指針に基づいてシステム運用がなされてきたか、また長期視点で一貫したメンテナンスを行うことが必要である。システムの維持には保守費用や運用費用を払っていることが多いと思うが、これだけでは将来の負債を減らしていくことはできない。やはり、鳥の目を持つITコンサルタントやITアナリストなどの役割を持つメンバーが必要である。

まとめ

ITコンサルタントやアナリストは、すぐに利益も生まない、経費を削減するわけでもないといったコストセンターとしてのポジションなので、あまり起用していない中小企業も多いようである。投資に対する効果が見えにくいのは、料理でいう香辛料と同じなのかもしれない。その少しの投資が未来を大きく変えることになる。IT技術は日進月歩で発展するからである。

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DX成果が出ないときの処方箋

焦りの正体

「DXを推進しているのに、目に見える成果がまったく出ない」。そんな焦りに押しつぶされそうになっていないだろうか。ツールを導入し、業務フローを見直し、社内への説得に奔走する毎日。それでも経営層からは「結局なにが変わったの?」と聞かれてしまう。中小企業白書においても「具体的な効果や成果が見えない」はDX推進の代表的な課題として挙げられている。この焦りを抱えているのは、あなただけではない。

成果が出ない真因

DXの成果が見えにくい最大の原因は、成果が表れるまでの「時間軸」を正しく認識できていないことにある。DXは売上のように短期で数字に直結する取り組みではなく、業務プロセスの再設計や組織文化の変革を伴う中長期的なプロジェクトである。経済産業省のDX推進指標でも、定量的な成果測定の難しさが指摘されている。たとえば紙帳票を電子化しても、その効果がデータとして蓄積され意思決定のスピードに影響を与えるまでには数か月単位の時間がかかる。焦りの根本は「すぐに大きな成果が出るはず」という期待値のズレにあるのだ。

小さな成功の見える化

では、どうすれば成果を「見える化」できるのか。鍵となるのは「小さな成功の可視化」である。いきなり全社的な大変革の成果を求めるのではなく、まずは一つの業務改善にフォーカスすべきだ。たとえば「請求書処理の時間が週5時間短縮した」「問い合わせ対応のスピードが30%向上した」など、数値で語れる改善を一つずつ積み上げていくのである。具体的にはKPI(重要業績評価指標)を事前に設定し、改善前後のデータを比較できる仕組みをつくることが有効だ。作業時間の短縮率、エラー件数の減少、コスト削減額といった定量的な指標を継続的に追いかけることで、経営層にも現場にも「確かに前に進んでいる」と伝えられるようになる。小さな数字の積み重ねが、やがて大きな説得力を持つのである。

組織を動かす一歩

小さな成功を積み上げることには、もう一つ大きな意味がある。それは「組織全体の巻き込み」だ。一つの部署でDXの効果が数字として証明されれば、他部署からも「自分たちの業務でも試してみたい」という声が自然と上がり始める。DXは「推進する」ものではなく「広がる」もの。そのためには最初の成功事例をモデルケースとして社内に共有し、横展開していく流れをつくることが重要である。社内ミーティングや掲示板で改善実績を発信し、成功体験を共有する文化を根づかせるべきだ。焦って大きな成果を狙うよりも、小さく始めて確実に成果を示す「スモールスタート」の姿勢こそが、結果として全社的なDX推進を加速させるのである。目の前の焦りに負けず、一歩ずつ着実に前進していくことが大切だ。

まとめ

DXの成果が見えないと感じたときこそ、「時間軸の見直し」と「小さな成功の可視化」に取り組むべきである。KPIを設定して改善を数値で追いかけ、スモールスタートで着実に実績を積み重ねていく。大きな変革は、小さな一歩の先にある。この順番を意識するだけで、漠然とした焦りは確かな手応えへと変わるはずだ。

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