オフショア開発の変遷と現状

1. はじめに

オフショア開発は、かつては主にコスト削減を目的として行われていました。日本のソフトウェア産業は、人件費の差を利用して中国を受託先として選ぶことが一般的でした。また、日本の企業は製造業など他の産業でも中国に進出し、その人件費の安さを利用することが多かったため、ソフトウェア開発でも中国へのアウトソーシングが一般的でした。さらに、日本語の場合にはダブルバイトという特殊な問題もあり、中国人が漢字を理解できるという利点がありました。このため、中国の中でも特に大連が多くのオフショア開発プロジェクトを受け入れる地域となっていました。

2. オフショア開発の変遷

かつてのオフショア開発は、主に大規模なデータ入力を伴うBPO(Business Process Outsourcing)プロジェクトに似たような形で利用されていました。しかし、現在では双方向のやり取りを含むアジャイル的な開発に応用されるようになりました。ただしBPO 的な、すなわち単純な入力やルールに基づく作業の需要は今でも多く存在しています。このような需要に対応するため、開発プロジェクトはアジャイル開発を行うプロジェクトと、データ入力やタグ付けなどの作業に従事するプロジェクトに分かれていく傾向にあります。例えば、AIの流行により教師データを作るためのBPOは、中国やベトナムを含む世界中で活発に行われています。

3. オフショア開発の変化要因

オフショア開発が変容していく中で、人件費の上昇以外にもう一つの要因があります。それは情報通信の発展です。20年前の中国の大連においてオフショア開発が行われていた頃は、通信手段が電子メールとその添付ファイル程度しかありませんでした。また、その前の時代に作成されたものは紙ベースのドキュメントが主流でした。しかし、現在ではチャットやビデオ会議などの通信手段が進化し、特に画面共有の速度が実用的となりました。さらに、自動翻訳ソフトウェアも利用されるようになりました。同時通訳の精度向上や音声認識の発展も進んでおり、将来的には同時通訳のような実用化も期待されます。

4. オフショア開発の現状

現在、オフショア開発を利用している開発現場は増加しており、一般的な選択肢となっています。その背景には、日本国内におけるソフトウェア開発者の不足が挙げられます。また、ソフトウェア開発の手法が世界的に平準化されていることも重要な要素です。開発環境やツールの利用において、国内と海外で大きな差はありません。さらに、ソフトウェア開発に関する知識がコモディティ化し、世界中の若いエンジニアが現代的な知識を教科書から学んでいることも要因の一つです。これらの要素により、オフショア開発が一般的な選択肢となりました。

5. 結論

オフショア開発は、コスト削減を目的として始まりましたが、現在ではその目的は多様化しています。技術の発展や通信手段の進化により、オフショア開発はアジャイルな開発に応用されるようになりました。また、オフショア開発を利用する開発現場の増加には、ソフトウェア開発者の不足や知識のコモディティ化が影響しています。これらの要素が重なり合い、オフショア開発が現在の姿となっています。

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なぜベトナムはERPシステム開発に向いているか

ベトナムは、ERPシステムの開発を行うのに適した場所と言えます。特に、日本企業が自社の生産拠点や流通拠点をベトナムに持っている場合や、ERPシステムが過去に作成したwebベースのものである場合は特に向いています。ここでは、その理由について解説します。


ベトナムの市場理解と製造業との親和性

ERPは業務に直結したシステムであるため、業務理解と市場の理解が欠かせません。ベトナムを生産拠点にしていたり、ベトナム市場に製品を販売している日本企業は多いため、そのような日本企業はベトナムの物流や製造現場に慣れているからです。ベトナムの市場理解と製造業との連携により、ERPシステムの在庫管理など、製造業に特化した機能を効果的に開発することができます。これにより、生産管理や物流効率の向上を実現し、ビジネスの競争力を強化することができるでしょう。

ベトナムにおける既存の知識と日本語通訳者の能力

トナム人の日本語通訳者の能力も向上しており、生産や流通に関わる日本語も習得しています。これにより、ERPシステム開発プロジェクトの効率性が向上し、品質の高い成果物を生み出すことができます。

ベトナム国内には、日本企業の製造や流通、決済に関する知識が蓄積されています。日本企業の進出が主に製造業から始まったため、ベトナムではこれまでに日本独自の慣習や用語についての理解が深まってきました。このような環境下でERPシステムを開発することで、ベトナムとの意思疎通がスムーズに行われ、開発段階での要件の理解に対しての円滑なコミュニケーションが可能です。ベ

ベトナムのオフショア開発の特質と既存システムの改善

ベトナムのソフトウェア業界は、オフショア開発からスタートし、成熟した実装能力を持っています。しかし、そのような経緯のために上流工程については苦手です。要件定義や仕様作成の段階からベトナムに丸投げしてしまうのはあまり良いこととは言えません。その部分は日本側で行い、実装段階をベトナムで行なうのが良いでしょう。

特に20年前からのWebベースのERPシステムのリプレースや改善をする場合は、ベトナムは適切な場所と言えます。過去に作成された既存のシステムは現在の技術やセキュリティ基準に合致していない場合があります。しかし、ベトナムの開発者が現代的な技術を使ってUIやUXの改善に取り組むことで、既存システムの現代化やセキュリティの強化が可能です。 具体的には、DBはそのままにして、古い技術で作られているフロントエンド部分をリプレースすると言ったプロジェクトが良いでしょう。

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オフショア開発の変遷と現状

オフショア開発のコストダウン目的

オフショア開発における主要な目的は、プロジェクトの総コストを削減するために人件費を削減することです。日本の開発者の人件費が高いため、ベトナムの開発者と置き換えることで財務的なコストダウンを実現してきました。ただし、外国に発注するということは、品質の低さと言葉の壁という2つの問題がつねにつきまといます。

内部コストと労働者の負担

人件費の削減は財務上のコストダウン効果を直接的に実現しますが、品質の低さや言葉の壁といった問題は現場の労働時間や精神的な負担として現れる内部コストです。これらの内部コストは労働者に転嫁され、営業側が値引きを行い開発現場の労働に影響を与える仕組みとなっています。オフショア開発に対する開発現場からの評判の悪さは、このような直接的な感覚から生じていると考えられます。

品質の向上と言語の壁

品質の低さや言葉の壁は改善の兆しを見せています。20年前と比較すると、通信手段や開発ツールが進歩しました。チャットやビデオ会議、画面共有などの技術が利用できるようになりました。また、クラウドやソースコードの共有などの管理システムも進化しました。言語の壁も同様で、ベトナムにおける日本語の理解力や日本人における英語の能力は向上しています。さらに、機械翻訳の進歩により、外国語を交えながら技術的な会話が容易になりました。

品質と納期の重要性

オフショア開発において品質と納期は重要な要素です。納期を守り、仕様を満たすことが最終的な評価基準となります。優れた開発チームやツールの活用は重要ですが、納期の達成と仕様の達成が果たされなければ、プロジェクトは失敗となります。

新たなオフショア開発の戦略

オフショア開発におけるコストダウンの戦略は、技術の進歩を活用する方向に進んでいます。開発手法として、ウォーターフォール型ではなくジャイルやOSS的な手法を導入することが求められています。また、国際的な標準的なツールやバージョン管理などの利用も重要です。さらに、コミュニケーションの円滑化も不可欠です。言葉の問題だけでなく、コミュニケーションの円滑化は人間によって担保されます。

オフショア開発の変遷において、品質やコミュニケーションの改善は見られますが、人件費の差によるコストダウンは限界に近づいています。技術の進歩を取り入れた新たな戦略の導入により、より効果的なオフショア開発を実現することができるでしょう。

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モックアップの料金

要件定義の意義

ユーザーの要件を明確にすることで、開発の方向性がブレず、無駄な修正や手戻りを防ぐことができる。定期的なミーティングやレビューセッションを通じて、開発者はユーザーのニーズを正確に把握し、ドキュメント化やモックアップ化することが重要である。

試作品の価値

SEはユーザーに具体的なイメージを持ってもらうために、プロトタイプやモックアップを作成し、ユーザーに確認してもらうことで、誤解や認識のズレを減らす。これにより、実装後の大幅な変更を回避できる。

モックアップの功罪

モックアップの作成は有料であることが多いようである。また、非エンジニアがシステム技術を意識しないモックアップであれば、その後の開発が複雑になってしまうといったことも考えられる。

ユーザー主導開発

モックアップを用いてユーザーがシステムの機能や開発プロセスについて理解を深めることで、適切なフィードバックを提供することが大切である。開発チームとのコミュニケーションも円滑になり、無駄な手戻りや修正を減少する。

まとめ

システム開発におけるユーザーと開発チームのコミュニケーション改善が、システム開発コストを軽減する。そのためには視覚的にコミュニケーションできるモックアップは重要であろう。

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