内製化の成功術

IT報酬の実態

海外と比べて日本のITエンジニアの報酬が低いという記事をよく目にする。それもそのはずで、ハイクラスIT人材は都合のいい「何でも屋」にはならないからである。

導入時の誤解

ユーザー企業やシステムのユーザーは、IT化を行うことで業務が減るという先入観を持っていることがある。システム導入を着手したときの目的を忘れて、その時、その場の課題を優先して都合よくITエンジニアを動かしてしまう。また動くITエンジニアもそこにいたりする。

システムと医療

たとえば、「お腹が痛い」と病院にいって「すぐに切開しよう」とはならないはずだ。このようにシステムにもその他にも色々な条件が絡まり合っている。システムは取り扱う情報量や関連する業務が多く導入に時間がかかる。時間がかかる結果、最初の導入目的を忘れてしまうのである。

真のIT人材価値

ハイクラスIT人材はユーザー側の状況と心理を配慮しつつ、現場のプログラマーの状況と心理を考慮して陣頭指揮できる人材といってもよいだろう。心理というのは物の言い方だけではなく、無形の財産を構築したり業務にフィットさせたりするので、プロジェクトの円滑さが変わるのだ。

まとめ

小手先だけでシステムに関するプロジェクトを推進しようとすると、「言われた通りにやった」という受動的な参加者が増えてしまう。情シスのSIer化を回避するにはITエンジニアを「何でも屋」にさせて疲弊させないことも大切である。開発チームの雰囲気作りも非常に効果がある。

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開発遅延の打開策

システム開発の現状と課題

数名で開発した初期のシステム構築から、システム会社を変更して大がかりなリプレイスを行い、保守運用を実施しているが、月々の費用が高額であるわりに、開発スピードも遅い。開発スピードが遅いため、新しい機能を実装していけない。

不具合と開発の不透明性

リリースから何年も経っているのに不具合がなくならない。開発会社からの報告が曖昧で何にお金を支払っているのか謎のままであることが多い。

コスト削減と資源最適化

開発スピードを上げるには、システム開発コストの削減をしなければならない。コストを削減するということは、それで浮いたコストを開発に割り当てることができるため、結果的に開発スピードがあがることを意味する。

開発の透明性と妥当性

そのためにしなければならないことは、開発工程や開発過程の見える化および妥当性を担保することである。システムの比較検討ができないため、システム開発のコミュニケーションは一般的なものであると思い込んでいる。システム発注の担当者はシステムのことがわからないから、システム開発の進め方に違和感があったとしても技術者が言うことを信用するほかないと思っている。

まとめ

結果として、技術者の工数と称して月々の費用や、ひどいものでは言語のバージョンアップと称して、何もしていないことに費用を支払っていることもある。不明点はシステム発注の担当者が理解できるまで聞くべきである。

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賢いコスト削減

投資と競争力

バックヤードのシステム開発は収益と直接結びつかないため、できるだけケチりたいものである。にもかかわらず、バックヤードのデジタル化には大きなコストがかかる。しかし、新しいインフラに適切な投資ができない企業は競争力を失うのである。

要件定義の罠

バックヤードのシステムをできるだけ安く抑えようと思うと、要求定義や要件定義をしっかり作って依頼すればよいと考えがちである。もちろん、間違ってはいないが、入り口が安くなるわりに、システム開発の途中で追加工数が発生してしまい、結果としてシステムが高くなってしまうのである。

未来志向の要求

システム開発の途中で追加予算がかかってしまうのは、最初の要求定義や要件定義のときに想定される未来が見えていないことが原因である。これを見通すには要求定義や要件定義を行う背景や、未来の目指すところまでをエンジニア出身のアナリストに情報共有しなければならない。

投資の真価

導入時の金額だけをケチることは、保守運用などのランニングコストに跳ね返ってきてしまい、システムの寿命が短くなる。そうならないために、第三者のIT業者やITコンサルタントを入れるほうがよいと言われている。うまくDX化できれば生産性が上がり、投資を大きく回収できる。ことIT投資については、竹槍戦か空中戦かくらいの違いを生んでしまうのである。

まとめ

システム設計やプログラミング作業と同じようにITコンサルタントも1人の能力に偏りがちである。それゆえ、PMOと呼ばれるチームを形成することで、集合知を活用して、さらに未来を予測できるような体制を構築することが望ましい。

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業務データ資産の発見と活用

AI活用の第一歩

AI活用による生産性向上のためのシステムツール構築では、過去データの利用が必要不可欠である。しかし、過去データが整備されていない場合の対処法を考えてみたい。多くの企業がAI導入を検討する際、まず直面するのがこのデータ品質の問題である。完璧なデータセットを求めがちだが、実際には現実的なアプローチで進めることが成功への鍵となる。

目的の明確化

まず「何に使いたいデータなのか」を明確にする必要がある。目的に応じて、必要なデータの「粒度・項目・量」が変わるため、いつも扱っている部門ではない人が客観的に整理するのがよいかもしれない。例えば、生産管理の異常検知であればセンサーデータの時系列とアラート履歴が必要になり、顧客離反の予測であれば購買履歴と問い合わせ履歴が必要になる。このように具体的な用途を定めることで、収集すべきデータの方向性が見えてくる。

データの現状把握

やりたいことを整理すれば、次に足りないデータなどが見えてくるはずである。このとき、データが重複していたり、欠損していたり、バラバラであったりというのも、すべてデータはあるものと考える。形式としては、Excel、CSV、紙、システム内に点在などを把握して、データの棚卸を行う。完璧でないデータでも、適切な処理を施すことで価値ある情報源に変わる。重要なのは、現在持っているデータ資産の全体像を正確に把握することである。

データ整備の実践

データの棚卸が終われば、データクレンジング(整備)の作業方針を立てる。手動で整えるのか、何らかのツールを使うのか検討が必要である。また、このツールはExtract(抽出)、Transform(変換)、Load(読み込み)の頭文字をとってETLツールと呼ばれている。Power Queryなどがその代表例である。作業量と精度のバランスを考慮し、コストパフォーマンスの高い整備方法を選択することが重要になる。自動化できる部分は積極的にツールを活用すべきである。

まとめ

データを整えていく途中で足りないデータが発見されることもあるだろう。しかし、ここからがAIの使い様である。ファインチューニング(学習させていく)ことや、生成AIやRAG(Retrieval-Augmented Generation)を利用して補完するなどが考えられる。

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