予算ブレの原因

開発の変動要因

システム開発は長期にわたることが多く、また未来の不確実性の中で予算を策定しなくてはいけないことがある。セキュリティーをはじめ動作環境の変化や人員の欠如、予期していなかった仕様の発覚などが原因だ。

目標変化と予算

進捗率は目的地が明確に設定されていれば数字を負うことで予算達成率を算出することができる。しかし、目的地が近い遠いのは無しではなく、根本的な目的地がなくなったり、複数になったりすることがシステム予算の策定の難しいところである。

計画型開発法

システムに未来を見ることができればブレない、見えないことをすべて調査の上で着手できれば確実な予算と実行が可能である。進捗率の報告が可能になる。フォーターフォールモデルなのでコストがかかることと時間がかかることの覚悟が必要だ。途中での方向修正は原則できない。

柔軟な開発手法

逆に低予算で早く導入するなら、見えにくくなるデメリットがある。状況によって対応を素早く変化させる必要があるため進捗率を算出しにくい。アジャイル開発と呼ばれるものであり、社内開発であることが理想である。途中で出てくる条件に対しても柔軟に方向性を変化させることが可能である。

まとめ

アジャイル開発で予算を立てるときは、1.5-2.5倍くらいを目安に余裕を持って設定することを推奨する。

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要件定義の問題点

はじめに

会社の雰囲気や要件定義の内容をみれば、おおよそそのプロジェクトが成功するか否かがわかる。うまくいかない場合のユーザー側とシステム会社側の原因の一例である。

・要件定義をシステム会社に任せてしまう
・元請けシステム会社が無理な要件でも受注する
・準委任契約の人材紹介会社がリスクなく利鞘を稼げる
・末端エンジニアの作業遂行以外の責任
・ユーザー側、発注側の担当者が保身する

今回はその背景を説明したい。

要件定義の丸投げ

要件定義をシステム会社に任せてしまう。
要件定義はシステム会社がユーザー企業をヒアリングして作るものではなく、ユーザーとシステム会社が議論を重ねることで答えを出していくものにしなくてはならない。ユーザーが目指すべき姿と、システム会社が実現すべき姿のすり合わせが重要である。

無理な受注

元請けシステム会社が無理な要件でも受注する。
無理な要件でも受注できるのは、発注側にもシステムの知識がないため、ゴールが曖昧なまま元請けシステム会社が請け負ってしまうからである。もし、発注側にITリテラシーがなければ、パワハラなども発生する可能性が高い。したがって、元請けシステム会社に精神的な課題を回避するため、要件定義を作る人でさえも二次受けシステム会社から集めてくることがある。

人材紹介会社の利益構造

準委任契約の人材紹介会社がリスクなく利鞘を稼げる。
システムの完成責任は負わず、作業だけ請け負うことになるため、人さえ集めてくれば、そこでリスクなく利鞘が稼げる。発注側のユーザー企業からすれば、契約は元請けシステム会社であるため、3次請け、4次請けを使おうが、完成さえすればいいと考えていることが多い。

エンジニアの責任範囲

末端エンジニアの作業遂行以外の責任。
末端のエンジニアには、クライアントとの調整や導入、一定品質や納期の遵守など、責任感や危機感がないこともある。プロジェクトの全貌が見えないことも原因である。また、言われたことをやるだけで報酬がそこそこあるのが、システムエンジニアの業界だったりするので、作業をした時間分だけ報酬を支払ってほしい、という話にもなる。

発注側の保身

ユーザー側、発注側の担当者が保身する。
システム開発がうまくいかなかったときに、発注側の担当者がシステム会社に責任を押し付けるといったことがある。これは信頼関係によるもので、共同でプロジェクトを成功させようという目標が作れなかった場合に発生する。システム会社を業者扱いして要件定義を丸投げしてしまわないようにしなければならない。

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リーダーの多忙による弊害

危険な繁忙化

なぜか忙しくしているPMやリーダーとなるSEがいれば危険信号である。リーダーが忙しくなると全体的な最適化や効率的な運用ができていない可能性がある。結果として、無駄に費用がかかったり、技術的負債が大きくなったりする。

役割分担の歪み

システムのユーザー側から見ると、SEという見え方しかしないと思われるが、実際はシステムの運用や開発には細かな作業分担が発生する。この作業分担ができていない場合は窓口のSEが余計な作業を行っている可能性がある。役割分担の不均衡がもたらす忙しさではなく、まったく仕事としてやらなくてもよいような事に時間を使っていて忙しい場合がある。

プロセスの確立

たとえば、プログラムが解析できる人をリーダーとしてしまうと、開発者に手取り足取り指示をしてしまうことがある。もし、リーダーがプログラムレビューなどの作業や、開発者にプログラム上の細かな指示をしている場合は注意が必要である。何を基準にプログラムレビューや指示を行うのか、という仕事を見える化し、仕組化することがリーダーの務めである。

俯瞰的視点

木を見て森を見ずという言葉があるように、リーダーとなる人は指針を作ったりメンバーをプロジェクト成功へ導く役割がある。リーダーが開発メンバーと同じように木ばかりを見ているようであれば、森を見る人が非エンジニアであるユーザー側となってしまうことが考えられる。

まとめ

誰が森を見るのか、リーダーやPMが常に忙しそうにしている場合は、何に時間を使っているのか調査する必要がある。実はここがボトルネックになっていてプロジェクトの進行が思うようにいかなかったり、頻繁にリスケが発生していることも多くある。しかし、これは本人にヒアリングするだけでは表面化しないため、ユーザー側の担当者やプログラマーなどの周辺人員から浮き彫りにすることが望ましい。

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要件定義のアプローチ

要件定義の基本

すべてをシステムで解決してしまおうとする要件定義には注意が必要である。システムの成功の可否は要件定義にかかっていると言っても過言ではない。しかし、十分に要件定義の時間を使ったにも関わらず、ITプロジェクトが失敗することがある。

規模別の要件定義

システム構築の規模によって、要件定義の粒度が変わる。小さなITプロジェクトの場合は要件定義をせずにプロトタイプを作りながらシステム構築を進めるといった方法がある。これをアジャイル開発、プロトタイプ開発と呼ぶ。

要件定義の本質

要件定義の粒度は時間を掛ければ細かくなるわけではない。ユーザー側でも要件定義を進めるにつれて、想定している機能の矛盾点が出てくることがある。この矛盾点を解消していくこと自体を要件定義としてはならない。要件定義はあくまで本質的なコアとなる部分から膨らませることが重要である。

対話型要件定義

要件定義フェーズで失敗するパターンは、ユーザー側との対話ではなく、システム会社側がヒアリングに徹する場合である。ユーザー側はITを利用してどのようなことができるかを知らない可能性が高いため、システム専門家がそれを鵜呑みにした仕様で要件を固めてしまうと、製造工程で無駄な工数が発生し予算をオーバーしてしまうことがある。

まとめ

本質的な要件をコミュニケーションによって、はっきりさせていく作業こそが要件定義と言えるのである。さまざまな視点から何度も繰り返し要件をなぞることで粒度が落ちていき、適切な要件定義書となる。何でもかんでもシステム化せず、オペレーションとの関係性を見合わせながら進めることが望ましい。

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