熱意の共有

提案と負担

「なぜ、自社のシステム担当者や社外から常駐するSEは、システムの改善提案をしてくれないのだろう?」と思うことはないか。それは、提案することで自分が大変になってしまうことを理解しているからである。

現状維持の理

自分たちが大変になるだけであるため、普通に考えれば、それを「やろう」と思うはずがない。それがシステム担当者から提案が出てこない理由であろう。

知と意欲

そうなると、非エンジニアやシステム営業が発想する提案は、システムの要件や縛りを無視した案になってしまう。問題解決意欲の高い非エンジニアが指揮するシステム開発を成功させるには、同じ温度感を持つエンジニアを味方につけるほかない。

人材の見極め

システム担当として向いている人材を探すことは非常に困難である。仮に全社的な問題解決意欲の高いエンジニアを採用したとしても、本当のスキルがどの程度であるか知ることができない。システムの開発のほとんどは巻き戻すことができないからである。

まとめ

システム開発や運用の大変さを知る人材ほど、モチベーションがない限り全力を出し切らせるには、相当の熱量を伝えることが肝要である。

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ベトナムオフショア開発に向く3つのプロジェクトと、向かない3つのプロジェクト

ベトナムに向くプロジェクトの特徴

ベトナムへのソフトウェアのオフショア開発については昔から肯定的な意見と否定的な意見があります。昨今のベトナムの人件費の向上と日本の人件費の低下、そして円安もあり、コストダウン効果が見込めなくなってきています。しかし、単に海外オフショア開発が良いか悪いかという単純な問題ではなく、ベトナムの特徴を踏まえて、どのようなプロジェクトが向いているのか見極めることが重要です。本記事では、ベトナムにおけるオフショア開発に向く3つのプロジェクトと、向かない3つのプロジェクトを紹介します。

ベトナムに向くプロジェクト

1. 生産拠点や流通拠点を持つERPシステム開発

日本企業がベトナムに自社の生産拠点や流通拠点を持ちそのためのERPシステムを開発する場合、ベトナムは適した場所と言えます。ベトナム企業はベトナムの市場に精通しており、日本企業もベトナムの物流や製造現場に慣れています。また、ERPシステムの構築経験も蓄積されており、ベトナムのソフトウェア業界は成熟しています。さらに、ベトナム人の日本語通訳者の能力も向上しており、生産や流通に関わる日本語も習得しています。このような環境下でのERPシステム開発は、効率的かつ円滑に進めることができます。

2. ライトなWeb開発など経験を必要としない開発分野

技術の進化が激しいWeb開発など、比較的ライトで長年の経験を必要としない開発分野においても、ベトナムは適した場所と言えます。これらの分野では、若くて習得の早い技術者が求められます。ベトナムの技術者は熱意を持ち、新しい技術の習得に積極的です。また、技術自体も日本やベトナムといった特定の地域に依存せず、汎用性の高いものが多いため、ベトナムの技術者との協力により効果的な開発が行えます。

3. BPO的なプロジェクトでの教師モデル開発や画像タギングなど

ベトナムはAIにおける教師モデルの開発や画像のタギングなどのBPO的なプロジェクトにも適しています。ベトナムの基礎教育レベルは高く、労働者の字の読み書きやPCの使用能力に問題はありません。また、ベトナムはピラミッド型組織を構築しやすい文化的環境が整っているので大量生産に向いています。これらの要素を活かして、BPO的なプロジェクトをベトナムで展開することは効果的です。

ベトナムに向かないプロジェクト

1. コストダウンが目的のインクルーシブなプロジェクト

単純なコストダウンが目的のインクルーシブなプロジェクトは、ベトナムにとって戦略的な選択肢とは言えません。最初は若くて安いエンジニアを投入することで一時的なコストダウン効果を得るかもしれませんが、時間が経つにつれて人件費が上昇し、コストが増加してしまいます。また、ベトナムのエンジニアも自身のキャリアパスを考えるため、離職率が高く、人材の取り替えが困難になる場合もあります。

2. AIなど最先端技術のラボラトリーとしてのプロジェクト

ベトナムはAIなどの最先端技術のラボラトリーには向いていません。ベトナムは積極的な技術開発を行っていますが、他の国々も同様に積極的であり、特にアドバンテージがあるわけではありません。また、最先端技術になるほど人件費が高くなり、ベトナム価格でも他の国と競争することが難しい場合があります。このような背景から、ベトナムにおける最先端技術の開発には慎重な判断が求められます。

3. 最終消費者向けのセールスやマーケティングシステム

最終消費者向けのセールスやマーケティングシステムは、ベトナムとの文化や商習慣、法律、税制などの違いにより、開発が困難となる場合があります。ベトナム側で日本のマーケットに適したシステムを開発することは難しく、逆に日本側でもベトナム市場に合わせたシステムを構築することは容易ではありません。ただし、バックエンドのシステムに関しては国による違いは少ないため、ERPのようなバックエンドのシステム開発はベトナムでも適しています。

以上がベトナムにおけるオフショア開発に向くプロジェクトと向かないプロジェクトの一例です。プロジェクト選定においては、ベトナムの特徴や環境を的確に把握し、ベターな組み合わせを選ぶことが成功への重要な戦略となります。

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生成AIは使えない?

思い通りにならない理由

生成AIを導入したのに思ったような結果が得られない――そんな経験をしたことがある人も多いだろう。AIは進化を続けているが、それを使いこなす側にも試行錯誤が求められている。特に企業においては、社内情報を整理すればするほど目的の答えに辿り着けなくなる「RAGの沼」にハマることがある。多くの企業が生成AIを武器にしようとしているが、その真価を引き出すには、正しい導入と運用が欠かせない。

RAGとは何か

RAG(Retrieval-Augmented Generation)は、「検索」「拡張」「生成」の頭文字を取った技術であり、生成AIに独自情報を与えることで回答の精度を上げる手法である。インターネット上の情報だけでなく、社内マニュアルや業務データなどを取り込むことで、より業務に即した回答が可能になる。ただし、期待する結果が得られない場合、その原因は提供リソースの質や構造にある可能性が高い。

ChatGPT以外の選択肢

現在、生成AIとして多くの大規模言語モデル(LLM)が存在する。OpenAIのChatGPTをはじめ、AnthropicのClaude、GoogleのGemini、MetaのLLaMA、Mistral、Cohere、さらにAlibabaやBaiduといった中国系ベンダーもある。それぞれに強みがあり、RAGに適したモデルも存在する。たとえばCohereのCommand R+やMistralのMixtralなどが代表的だ。目的に応じてLLMを選び、最適な環境を整えることが重要である。

社内AIを成功させるには

セキュリティ上の理由から、社内情報をインターネットに出せない企業も少なくない。その場合、オンプレミス環境(社内ローカル)に生成AIを構築する選択肢がある。たとえばTinyLLaMAやPhi-2のような軽量モデルから、Nous HermesやMixtralなどの対話・RAG対応モデルまで選択肢は豊富だ。これらを活用すれば、外部にデータを出さずともAIの恩恵を享受できる。必要なのは、自社の目的と環境に適した判断力である。

まとめ

生成AIはあくまで「道具」にすぎない。導入しただけで目的が自動的に達成されるわけではない。課題を定義し、適切な情報を整備し、それを使いこなす力が必要だ。RAGがうまくいかないと感じたら、その原因はリソースや設計のミスマッチにあるかもしれない。

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技術的負債の返済方法

負債の本質

技術的負債には、設計負債やコード負債がある。金銭的な負債であれば借入金やマイナスの表記で数字化できるのだが、技術的負債においては数字化できないことがとても難しい点である。経営に関するほとんどのことは定量化や定性化が可能だが、たとえば企業創業者の発想する「野生の勘」を直接的に数字化できないように技術的負債も一筋縄では見える化しない。

設計時の対策

技術的負債の中でもコード負債については、システム開発の現場からよく発想されるリファクタリングや再構築などを行うことで比較的わかりやすい返済方法となる。知らない人が作ったプログラムや古くなったプログラムのバージョンなど、リスクを表現し対応することができる。何よりも最初の企画設計段階で負債が積みあがりにくい仕組みを考えることが大切である。

高負担な設計

技術的負債の中でも利息の高い負債が設計負債である。単体機能における設計であれば、モジュールごとの再設計によって返済が可能である。しかし、プログラムは複数のモジュールが絡まり合っていることがほとんどなので、複雑なオペになってしまう。また、稼働中のシステムにわざわざ再設計したプログラムを導入するリスクに対して、得れるメリットも少ないので見過ごされがちである。設計能力は例えば、紙というオブジェクトのメソッド(振る舞い)とプロパティ(保持する情報)を聞いて正しい答えが帰ってくれば多少安心であろう。紙の振る舞いは燃えるであり保持する情報は面積などがある。

根本的解決

しかし、技術的負債はこのように目に見えやすい設計負債やコード負債が致命的になることは少なく、やはりその上層でどのような指針に基づいてシステム運用がなされてきたか、また長期視点で一貫したメンテナンスを行うことが必要である。システムの維持には保守費用や運用費用を払っていることが多いと思うが、これだけでは将来の負債を減らしていくことはできない。やはり、鳥の目を持つITコンサルタントやITアナリストなどの役割を持つメンバーが必要である。

まとめ

ITコンサルタントやアナリストは、すぐに利益も生まない、経費を削減するわけでもないといったコストセンターとしてのポジションなので、あまり起用していない中小企業も多いようである。投資に対する効果が見えにくいのは、料理でいう香辛料と同じなのかもしれない。その少しの投資が未来を大きく変えることになる。IT技術は日進月歩で発展するからである。

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