相場の不在

開発の相場観

相場とは、一般的に市場で競争売買によって決まる商品の価格とされているが、ことシステム開発においては、相場というものが存在しない。

比較の難しさ

比較できる同じものであれば競争原理が働き相場が構築されるが、フルスクラッチされるシステム開発においては全く同じものができることはない。しかも、出来上がるものはパッケージシステムやSaaSの利用以外は、未来にしか完成しないので当然比較もできないものとなる。

将来要件判断

比較的ないからこそ、しっかりと吟味する必要があるが、吟味する材料や条件などは現時点で明確になるものが元となる。未来に発生する追加条件や変更される環境などはジャッジする時点にはすべて出そろわないという難しさがある。

変化への対応

システム開発は未来にどのような条件変更やルール変更が行われるかわからないものであるという認識を持つことが大切である。その上で最善のジャッジを行うべきである。その判断は過去を遡って正解か間違いかを評価すべきではない。

まとめ

日本では原点方式の人事評価が行われるため、イノベーションは起こりにくい本質的な問題がある。これを無視して「DXだ」といっている組織があるとすれば、それは本質を見誤っているといえる。

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IoT基礎知識

IoTとは

IoTとは「Internet of Things」の略で、身の回りのあらゆるモノがインターネットに接続される技術のことである。従来はパソコンやスマートフォンだけがネットに繋がっていたが、今では冷蔵庫、エアコン、照明、車など様々な機器がネットワークに接続できるようになった。これにより、遠隔操作や自動制御、データ収集が可能になり、私たちの生活はより便利で効率的になっている。

注目される理由

IoTの最大の魅力は、データを活用した自動化と最適化にある。例えば、スマートホームでは照明や温度を自動調整し、電気代を削減できる。また、工場では機械の稼働状況を監視して故障を予防し、農業では土壌の状態を把握して適切な水やりを行う。このように、IoTは単なる遠隔操作ではなく、収集したデータを分析して最適な行動を自動で実行する「賢いシステム」を構築できるのである。これが生産性向上やコスト削減につながる理由である。

導入チェックリスト

IoT導入を成功させるには、まず明確な目的設定が重要である。「何を改善したいのか」「どんな効果を期待するのか」を具体的に定めることで、適切な機器やシステムを選択できる。次に、セキュリティ対策は必須項目である。IoTデバイスはサイバー攻撃の標的になりやすいため、暗号化や認証機能の確認が欠かせない。さらに、既存システムとの連携可能性や、将来的な拡張性も考慮しよう。小規模から始めて段階的に拡大していく計画的なアプローチが、IoT導入の成功率を高める鍵となる。

未来への影響

IoTの進化は加速しており、5G通信やAI技術との融合により、さらに高度なサービスが実現される。自動運転車、スマートシティ、遠隔医療など、これまで夢物語だった技術が現実のものとなってきている。特に注目されるのがエッジコンピューティングで、デバイス側で即座にデータ処理を行うことで、リアルタイム性が向上する。一方で、プライバシー保護やデジタル格差といった課題も浮上しており、技術の恩恵を皆が享受できる社会の構築が求められている。IoTは単なる技術革新ではなく、社会全体の変革を促す重要な要素となるであろう。

まとめ

IoTは私たちの生活や働き方を根本から変える革新的な技術である。基本概念を理解し、導入のポイントを押さえることで、この技術の恩恵を最大限に活用できる。未来に向けて、IoTとの向き合い方を今から考えておくことが大切である。

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デジタル化の誤解:効率化の落とし穴

デジタル化は効率化を保証しない

デジタル化と聞くと、多くの人が効率化を期待する。しかし、たとえばFAXで受け取った紙の受注をOCR(文字認識)でデジタルデータ化し、データベースに保存しても、それは単なるデジタル化に過ぎない。デジタル化を行うだけでは本質的な効率向上は望めず、業務フローの見直しがなければ効果は限定的だ。

非効率なフローをそのままデジタル化するリスク

最も大きな問題は、業務フローを見直さずにデジタル化を行うことだ。従来の手作業のフローをそのままデジタル化すれば、かえって作業が煩雑化し、時間がかかることもある。特にITに疎い権限者が意思決定を行う場合、このような失敗はよく見られる。「デジタル化=効率化」と誤解し、実際には逆効果となるケースも少なくない。

俯瞰できないシステム担当者の問題

システム担当者やシステム会社が、俯瞰的な視点を持たない場合も問題だ。業務フローを把握せず、指示通りにデジタル化を進めれば、非効率なシステムが出来上がる。ユーザー部門は「IT化で逆に効率が悪くなった」と感じ、最悪の場合、システムが欠陥品だと誤解されることもある。業務の流れを把握し、適切にデジタル化を進めることが必要だ。

生成AI導入の失敗例

生成AIの導入に関する相談も増えているが、その多くは「期待通りに動かない」という内容だ。その原因は、多くの場合、AIが本来必要ない箇所に導入されていることだ。たとえば、ただのデータ管理であれば、生成AIではなくRDB(リレーショナルデータベース)のほうが合理的だ。効率を上げるには、AIの利用が本当に適切かを見極める判断力が必要だ。

まとめ

「ITが分からないから任せる」という姿勢はリスクが高い。ITを知らない人がIT化を進めるのは、決算書を読めないのに経営をするのと同じだ。業務フローを理解し、技術を正しく活用するには横断的な視点と経験が不可欠だ。

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熱意の共有

提案と負担

「なぜ、自社のシステム担当者や社外から常駐するSEは、システムの改善提案をしてくれないのだろう?」と思うことはないか。それは、提案することで自分が大変になってしまうことを理解しているからである。

現状維持の理

自分たちが大変になるだけであるため、普通に考えれば、それを「やろう」と思うはずがない。それがシステム担当者から提案が出てこない理由であろう。

知と意欲

そうなると、非エンジニアやシステム営業が発想する提案は、システムの要件や縛りを無視した案になってしまう。問題解決意欲の高い非エンジニアが指揮するシステム開発を成功させるには、同じ温度感を持つエンジニアを味方につけるほかない。

人材の見極め

システム担当として向いている人材を探すことは非常に困難である。仮に全社的な問題解決意欲の高いエンジニアを採用したとしても、本当のスキルがどの程度であるか知ることができない。システムの開発のほとんどは巻き戻すことができないからである。

まとめ

システム開発や運用の大変さを知る人材ほど、モチベーションがない限り全力を出し切らせるには、相当の熱量を伝えることが肝要である。

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