相場の不在

開発の相場観

相場とは、一般的に市場で競争売買によって決まる商品の価格とされているが、ことシステム開発においては、相場というものが存在しない。

比較の難しさ

比較できる同じものであれば競争原理が働き相場が構築されるが、フルスクラッチされるシステム開発においては全く同じものができることはない。しかも、出来上がるものはパッケージシステムやSaaSの利用以外は、未来にしか完成しないので当然比較もできないものとなる。

将来要件判断

比較的ないからこそ、しっかりと吟味する必要があるが、吟味する材料や条件などは現時点で明確になるものが元となる。未来に発生する追加条件や変更される環境などはジャッジする時点にはすべて出そろわないという難しさがある。

変化への対応

システム開発は未来にどのような条件変更やルール変更が行われるかわからないものであるという認識を持つことが大切である。その上で最善のジャッジを行うべきである。その判断は過去を遡って正解か間違いかを評価すべきではない。

まとめ

日本では原点方式の人事評価が行われるため、イノベーションは起こりにくい本質的な問題がある。これを無視して「DXだ」といっている組織があるとすれば、それは本質を見誤っているといえる。

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DX担当者の孤立問題

孤立の背景

DX推進担当者は、多くの企業で孤立しやすい立場にある。経営層からは変革の旗振り役を期待される一方で、現場からは通常業務の妨げと見なされることも少なくない。本来、DXは全社的な取り組みであるにもかかわらず、実際には担当者個人に責任が集中し、社内で十分な協力を得られないまま奮闘しているケースが散見される。この構造的な問題が、優秀な人材ほど疲弊し、離職につながる原因となっている。

板挟みの構造

DX推進担当が孤立する最大の要因は、経営層と現場の認識のギャップにある。経営層は売上向上やコスト削減といった抽象的な目標を掲げるが、それを具体的な施策に落とし込めていないことが多い。一方、現場は目の前の業務遂行に追われており、DXの必要性を感じていても「余裕がない」「やり方がわからない」と抵抗感を示す。この間に立つ推進担当者は、経営層の意図を現場に伝え、現場の声を経営層に届けるファシリテーターの役割を求められる。しかし、十分な権限や予算が与えられないままでは、単なる調整役に終わってしまう。

巻き込みの要点

社内を効果的に巻き込むには、三つのポイントが重要である。第一に、経営層のコミットメントを可視化することだ。経営層がDXの重要性を明確に発信し、推進担当者に権限と予算を付与することで、現場の協力を得やすくなる。第二に、部門横断型チームの編成である。各部署から選出されたメンバーでプロジェクトチームを組織し、多様な視点を取り入れながら推進することで、全社的な当事者意識を醸成できる。第三に、小さな成功体験の積み重ねである。大規模な変革を一度に進めるのではなく、パイロットプロジェクトから段階的に成果を示していくことで、現場の抵抗感を軽減できる。トップダウンとボトムアップの両面からアプローチすることが、巻き込みの成功につながる。

孤立防止の仕組み

孤立を防ぐためには、組織としての仕組み作りが欠かせない。まず、DX推進パートナー制度の導入が有効である。各部門に選任担当者を配置し、推進部門との距離を縮めることで、現場の課題を吸い上げやすくなる。次に、定期的な成果報告の場を設ける必要がある。経営層へのプレゼンテーションや社内への進捗共有を通じて、DXへの期待感を形成できる。また、現場の声を積極的に取り入れるフィードバック体制も重要である。デジタルツールを活用したアンケートやワークショップを定期開催し、改善策を現場と共同で立案することで、より実効性の高いDXが実現する。推進担当者を孤立させないことが、DX成功の大前提となる。

まとめ

DX推進担当者の孤立は、経営層と現場の板挟みという構造的問題から生じる。これを防ぐには、経営層のコミットメント可視化、部門横断型チームの編成、段階的な成功体験の積み重ねが重要である。組織的なサポート体制を構築し、担当者が一人で抱え込まない仕組みを作ることが、DX成功への第一歩となる。

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Power Apps入門:アプリ開発は難しくない

アプリ開発は難しくない

「業務アプリを作りたいけど、プログラミングの知識がない」――そう考えて一歩を踏み出せない方は多いだろう。MicrosoftのPower Appsは、コードをほとんど書かずに業務アプリを作れるローコードツールである。特別なIT知識がなくても、Excel操作ができる人であれば十分に始められる。まずは「何ができるか」を知ることから始めよう。

Excelからアプリへ

Power Appsでアプリを作る手順は、大きく3つのステップに分かれる。まず、現在Excelで管理しているデータをそのまま使い、Power Appsに取り込む。次に、画面のレイアウトをドラッグ&ドロップで組み立てる。テンプレートも用意されているので、ゼロから設計する必要はない。最後に、入力や表示のルールを設定して完成である。複雑な関数を書く場面はほとんどなく、Excelの関数に近い感覚で操作できる。

ローコードが注目される理由

ローコード開発が注目されている背景には、中小企業特有の事情がある。IT人材の採用が難しく、外注すれば費用がかさむ。かといってExcelのまま運用を続ければ、属人化やミスのリスクが増えていく。Power Appsであれば、現場の担当者が自分で業務に合ったアプリを作れるため、外注コストを抑えながらスピーディに改善を進められる。また、仕様変更が必要になった場合も自社内で対応できるため、柔軟性が高いのも大きなメリットである。「作って終わり」ではなく、業務の変化に合わせて育てていけるのがローコードの強みだ。

小さく始めよう

Power Appsを始めるなら、最初は小さな業務から取り組むのがおすすめである。たとえば日報の入力、備品の申請、簡単な計算ツールなど、日常的に使う業務をアプリ化すると、効果を実感しやすくなる。最初から完璧なアプリを目指す必要はない。まず動くものを作り、使いながら改善していくのが成功のコツだ。「自分にもできた」という体験が、現場全体のDX推進につながっていく。迷ったら、今Excelで一番手間がかかっている業務を選んでみてほしい。そこがPower Appsの最初の活用ポイントになるはずだ。

まとめ

Power Appsは、IT知識がなくてもExcel操作の延長で業務アプリを作れるツールである。まずは日報や申請書など身近な業務から小さく始め、使いながら改善していくのが成功の近道だ。最初の一歩を踏み出すことが、DX推進の起点になる。

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市民開発とは何か

市民開発の正体

市民開発(Citizen Development)とは、IT部門やSIerに依存せず、業務部門などの非エンジニアが自らアプリケーションを作成する取り組みを指す。従来は「プログラミングができないと無理」と思われがちだったが、現在ではノーコード・ローコードツールの登場により、非技術者でも業務に必要なツールを構築できるようになった。代表的なものとして、SaaSベースの業務アプリやMicrosoft Power Platformなどがあり、これにより業務現場の課題解決が加速している。

IT不足とマクロの功罪

市民開発が注目を集める背景には、深刻なITエンジニア不足がある。人手が足りないなら自ら開発するしかない——この流れが市民開発を後押ししている。その原型とも言えるのがExcelマクロである。かつて現場では、個人PC上で動作するマクロが業務改善ツールとして使われていたが、多くが属人化し、結果として保守不能な“遺産”となってしまっている。

マクロの限界

Excelマクロの最大の弱点は「ファイル単体依存」である。複数人での同時使用や、プログラムの共有に極めて不向きである。マクロ付きファイルをコピーすれば、そのコピーごとに独立した修正が可能となり、誰がどのバージョンを使っているのか把握が困難になる。しかも、更新履歴の管理も難しく、組織全体の業務統一を図るには限界がある。こうした特性が、非効率と混乱を招く要因となっている。

マクロの呪い

属人化の果てに起きるのが「ブラックボックス化」である。Excelマクロにパスワードがかけられ、開発者も不在、しかし業務には不可欠——そんな状態が現場には数多く存在する。これらは情報システム部の管理外にある「野良プログラム(シャドーIT)」と呼ばれ、セキュリティリスクを高める要因でもある。結果として、誰も触れず、誰も捨てられず、今も現場の根幹に鎮座している。まさに、手遅れになる前に対処すべき課題だ。

まとめ

市民開発は、Excelマクロに代わる次世代の業務改善手段となり得る。ローコード・ノーコードの活用により、野良プログラムの乱立を防ぐには、組織としての運用ルールとガバナンスの確立が不可欠だ。アタラキシアDXでは、Power Appsを活用し、手遅れになる前にブラックボックス化したマクロのリプレイス支援を行っている。

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