運用の昇華

開発現場の想定外

基幹システムの開発現場では、最初に想定した仕様とは異なる業務フローが後から発覚することが多い。

マネジメントの試金石

後から発覚した業務フローは、すでに構築が進んでいるシステムに組み込むことが難しいため、どのように対応するかがプロジェクトマネージャーの腕の見せ所である。

プロジェクトの舵取り

プロジェクトマネージャーとは何かと問われたときに、一言で言い表すならば、不測の事態にどのように対応できるか、ということではないかと考える。プロジェクトが何の問題もなく、完遂できることは少ない。したがって、イレギュラーケースが発生した時にどのような手立てを打てるか、迅速に行動できるかがプロジェクトマネージャーのレベルとなる。

パートナーシップの重要性

プロジェクトマネージャーがシステムの完成しか考えていなければ、途中から発覚した仕様は「運用でカバーせよ」とユーザー側に責任を押し付けてしまうことがある。しかし、より良いシステムを目指す、パートナーとしてであればこの回答は好ましくない。

まとめ

どのような事象がきっかけで、途中で使用漏れが発覚したのか、プロジェクトの進行状況を見ながら、ひも解くことが重要である。運用でカバーというユーザー側だけにだけ負担をさせるのではなく、運用をカバーするようなシステムを構築できるのが理想である。

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日本の技術人材不足とオフショア開発

セクション1: 日本のソフトウェア開発人材不足の背景

日本のソフトウェア開発業界は50年以上の歴史を持ち、多くの経験豊富なエンジニアが存在します。しかし、現在の日本では開発人材の不足が深刻な問題となっています。この人材不足は、企業が即戦力となるエンジニアを安価で求めるという要望に由来しています。そのため、日本の人材不足はしばしば「即戦力を安く求める欲求」として揶揄されることもありますが、この言い方には一面の真実も含まれています。企業が効率的な開発を行うためには、即戦力のエンジニアが必要なのは当然のことです。

また、この人材不足の問題は、単に日本だけに限ったものではありません。他の海外でも同様の人材不足が起きています。したがって、オフショア開発を検討する際には、都合の良い人材を海外で見つけることができるという考え方は一部正解であり、一部誤解とも言えます。

セクション2: 日本とベトナムのエンジニアの特徴

日本のエンジニアは、特にWeb関連のエンジニアにおいては、1990年代からのキャリアを持つベテランが多く存在します。そのため、文字コードやバイナリ、組み込み技術など、古いOSや低レベルの知識を必要とする開発においては、日本の技術者は強みを持っています。一方、新しいフレームワークや概念の習得には、国民性よりも年齢が影響を与える傾向があります。そのため、ベトナムのエンジニアは若さを活かして新しい技術を素早く学ぶことが得意と言えます。

また、コンピューター業界においては、上流と下流、低レベルと高レベルといった言葉が中立的に使われますが、この意味において日本は低レベル開発に向いており、ベトナムは高レベル開発に向いていると言えます。そのため、バランスの取れたオフショア開発を行うためには、日本のエンジニアのジェネラリスト的な能力とベトナムのエンジニアのスペシャリスト的な能力を組み合わせることが重要です。

セクション3: 日本とベトナムの開発手法の違い

日本のソフトウェア開発では、納期を守るためにウォーターフォール型の開発手法が主流です。アジャイル開発が概念的には取り入れられつつありますが、完全にアジャイルな開発プロセスを採用しているケースはまだまれです。一方、ベトナムのソフトウェア開発は、日本の開発手法と大きく異なるわけではありません。基本的には納期を守るためのウォーターフォール型の手法が一般的ですが、OSSの影響を受けて開発手法が変化しつつあります。

日本の開発現場と比較して、ベトナムの開発手法の利点は、新しいフレームワークや技術の習得において素早い反応性を持つことです。ベトナムのエンジニアは若く、学習意欲が高いため、最新の技術に対する理解が早く、柔軟に対応できるという特徴があります。ただし、ベトナムの開発現場においては、アジャイル開発の完全な導入はまだ一般的ではないことに注意が必要です。

セクション4: 言語の壁以外の考慮すべきポイント

ベトナムのエンジニアを活用する際に言語の壁を乗り越えるためには、円滑なコミュニケーションを図ることが重要です。英語がビジネスコミュニケーションの共通語となっているため、日本の企業がベトナムのエンジニアとのコミュニケーションを円滑に行うためには、英語教育の強化や翻訳ツールの活用などが有効です。また、文化やコミュニケーションスタイルの違いも考慮すべきポイントです。異なる文化背景を持つエンジニア同士が協力する場合、相手の文化に対する理解や尊重が求められます。

セクション5: 成功へのカギはバランスと柔軟性

ベトナムでのソフトウェア開発のオフショアを成功させるためには、日本とベトナムのエンジニアの特長を組み合わせることが重要です。日本のエンジニアはジェネラリストとして幅広い知識と経験を持っており、プロジェクト全体の管理や技術的な統括を担当することが得意です。一方、ベトナムのエンジニアはスペシャリストとして特定の技術に精通しており、新しい技術の習得にも素早く対応できます。

オフショア開発においては、開発現場のバランスと柔軟性が求められます。例えば、日本のエンジニアがジェネラリストとしてプロジェクトを牽引し、ベトナムのエンジニアがスペシャリストとして特定の技術領域を担当する役割分担が効果的です。また、現代的な開発手法を用いることも重要です。ウォーターフォール型の手法に加えてアジャイル開発の一部を取り入れるなど、柔軟に適切な手法を選択することが目的達成(コストダウン実現)へのカギとなります。

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マニアの逆効果

趣味の進化

趣味やコミュニティにファンが定着しないという話をよく耳にする。この現象を理解するには、戦後日本の変遷を振り返る必要がある。高度経済成長期に入ると、人々の可処分所得が増加し、余暇時間も確保されるようになった。これに伴い、日本人の趣味の選択肢は爆発的に広がっていったのである。

IT黎明期

そんな多様な趣味の選択肢の中から、パーソナルコンピュータという新しい文化が誕生した。初期のパソコンマニアたちは、その後のIT業界の礎を築いていった。彼らの情熱と探究心は、技術革新の原動力となったのである。ユーザー数が増加するにつれて、独自の用語やネットスラング、コミュニティ文化が形成され、デジタル時代特有の新しいコミュニケーション様式が確立されていった。

マニアの防衛

しかし、ユーザー層が拡大するにつれて、必然的にライトユーザーや一般層の参入が増えていった。この変化に対して、コアなマニア層の中から、自分たちが築き上げた文化や価値観を守ろうとする動きが現れる。彼らは意図的に専門用語を多用したり、新規参入者に対して高い障壁を設けたりすることで、独自の世界を保持しようとした。このような排他的な姿勢は、結果として健全なコミュニティの成長を阻害する要因となったのである。

IT変革期

このような状況は、しばしば「マニアが業界を衰退させる」という批判の対象となってきた。IT業界を例に取ると、黎明期には「オタク」というレッテルを貼られ、社会的偏見にさらされることも少なくなかった。しかし、ITバブル期に入ると状況は一変する。テクノロジーの急速な発展と共に、IT関連の職種は一気に注目を集める花形職業となっていったのである。この変化は、マニア文化が一般社会に受け入れられていく過程を象徴的に示している。

まとめ

現代では、パソコンの使用者をマニアと結びつけて考えることはほとんどなくなった。しかし、同様の現象は量産型のプログラミング業務の中でも起きていた。ローコード開発の台頭により、プログラミングは特別な知識を持つ人だけのものではなくなり、誰もが気軽に扱える時代となったのである。

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デジタル化の誤解:効率化の落とし穴

デジタル化は効率化を保証しない

デジタル化と聞くと、多くの人が効率化を期待する。しかし、たとえばFAXで受け取った紙の受注をOCR(文字認識)でデジタルデータ化し、データベースに保存しても、それは単なるデジタル化に過ぎない。デジタル化を行うだけでは本質的な効率向上は望めず、業務フローの見直しがなければ効果は限定的だ。

非効率なフローをそのままデジタル化するリスク

最も大きな問題は、業務フローを見直さずにデジタル化を行うことだ。従来の手作業のフローをそのままデジタル化すれば、かえって作業が煩雑化し、時間がかかることもある。特にITに疎い権限者が意思決定を行う場合、このような失敗はよく見られる。「デジタル化=効率化」と誤解し、実際には逆効果となるケースも少なくない。

俯瞰できないシステム担当者の問題

システム担当者やシステム会社が、俯瞰的な視点を持たない場合も問題だ。業務フローを把握せず、指示通りにデジタル化を進めれば、非効率なシステムが出来上がる。ユーザー部門は「IT化で逆に効率が悪くなった」と感じ、最悪の場合、システムが欠陥品だと誤解されることもある。業務の流れを把握し、適切にデジタル化を進めることが必要だ。

生成AI導入の失敗例

生成AIの導入に関する相談も増えているが、その多くは「期待通りに動かない」という内容だ。その原因は、多くの場合、AIが本来必要ない箇所に導入されていることだ。たとえば、ただのデータ管理であれば、生成AIではなくRDB(リレーショナルデータベース)のほうが合理的だ。効率を上げるには、AIの利用が本当に適切かを見極める判断力が必要だ。

まとめ

「ITが分からないから任せる」という姿勢はリスクが高い。ITを知らない人がIT化を進めるのは、決算書を読めないのに経営をするのと同じだ。業務フローを理解し、技術を正しく活用するには横断的な視点と経験が不可欠だ。

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