QCDの死角

失敗の正体

システムの失敗は見えないことがある。ブラックボックスであるがゆえに隠せてしまうからである。失敗かどうかの線引きができないところがシステム構築プロジェクトの難しいところである。

エンジニアの真実

もしかしたら、エンジニアが都合の悪いことは隠していることがあるかもしれない。しかし、決めつけてしまうとエンジニアはへそを曲げてしまう可能性がある。隠しているつもりはなくても隠れていることもある。

成功の境界

失敗の線引きは、納期が遅れることであろうか。バグが多いということであろうか。実は、状況によって一概に言えないのである。QCDという言葉があるが、品質と費用と納期のバランスを上手にとったとしても成功か失敗か、すぐにはわからないのがシステムという無形物である。

コスパの本質

コスパという言葉があるが、かけるコストに対して、どれだけのパフォーマンスが出せるかが問題となる。システム開発では、コストからやりたいことを計算するのではなく、やりたいことを明確にしたうえで、コスト内でリッチ度合いを調節することが重要である。

まとめ

システム開発においては、失敗が見えにくいため、失敗しないように見えるのかもしれない。失敗しないことは、成功であるということでもない。時間が経つにつれて失敗を感じることもあり得るのである。

関連記事

業務データ資産の発見と活用

AI活用の第一歩

AI活用による生産性向上のためのシステムツール構築では、過去データの利用が必要不可欠である。しかし、過去データが整備されていない場合の対処法を考えてみたい。多くの企業がAI導入を検討する際、まず直面するのがこのデータ品質の問題である。完璧なデータセットを求めがちだが、実際には現実的なアプローチで進めることが成功への鍵となる。

目的の明確化

まず「何に使いたいデータなのか」を明確にする必要がある。目的に応じて、必要なデータの「粒度・項目・量」が変わるため、いつも扱っている部門ではない人が客観的に整理するのがよいかもしれない。例えば、生産管理の異常検知であればセンサーデータの時系列とアラート履歴が必要になり、顧客離反の予測であれば購買履歴と問い合わせ履歴が必要になる。このように具体的な用途を定めることで、収集すべきデータの方向性が見えてくる。

データの現状把握

やりたいことを整理すれば、次に足りないデータなどが見えてくるはずである。このとき、データが重複していたり、欠損していたり、バラバラであったりというのも、すべてデータはあるものと考える。形式としては、Excel、CSV、紙、システム内に点在などを把握して、データの棚卸を行う。完璧でないデータでも、適切な処理を施すことで価値ある情報源に変わる。重要なのは、現在持っているデータ資産の全体像を正確に把握することである。

データ整備の実践

データの棚卸が終われば、データクレンジング(整備)の作業方針を立てる。手動で整えるのか、何らかのツールを使うのか検討が必要である。また、このツールはExtract(抽出)、Transform(変換)、Load(読み込み)の頭文字をとってETLツールと呼ばれている。Power Queryなどがその代表例である。作業量と精度のバランスを考慮し、コストパフォーマンスの高い整備方法を選択することが重要になる。自動化できる部分は積極的にツールを活用すべきである。

まとめ

データを整えていく途中で足りないデータが発見されることもあるだろう。しかし、ここからがAIの使い様である。ファインチューニング(学習させていく)ことや、生成AIやRAG(Retrieval-Augmented Generation)を利用して補完するなどが考えられる。

続きを見る >

中小企業のローコード活用法

ローコードの重要性

中小企業の経営者は、システム開発に数百万円かかると諦めがちである。しかし実際は、ローコード・ノーコードツールの進歩により、従来の1/10のコストと時間でビジネスアプリケーションを構築できる時代となった。大企業のような潤沢なIT予算がなくても、スピーディーで柔軟なシステム開発が可能になったのだ。むしろ、意思決定が早く、組織がフラットな中小企業の方が、ローコードの恩恵を最大限に活用できる環境が整っているといえるだろう。

コスト削減効果

ローコード導入により、中小企業は複数の大きなメリットを享受できる。まず開発コストの大幅削減である。従来のスクラッチ開発では500万円かかっていたシステムが、ローコードなら50万円程度で実現可能となる。次に開発期間の短縮効果も見逃せない。半年かかっていたプロジェクトが1〜2ヶ月で完成し、市場投入スピードが格段に向上する。さらに、専門的なプログラミング知識がなくても、現場の業務を理解している社員が直接システム構築に参加できるため、真にビジネスニーズに合致したアプリケーションが生まれるのである。

成功のポイント

実際にローコード導入で成功を収めた中小企業には共通する特徴がある。第一に、経営層がデジタル変革の重要性を理解し、積極的にサポートしていることだ。トップダウンでの推進により、組織全体の協力を得やすくなる。第二に、小さく始めて段階的に拡大するアプローチを取っていることである。いきなり基幹システムを刷新するのではなく、顧客管理や在庫管理など特定の業務から始めて成功体験を積み重ねている。第三に、社内のキーパーソンをローコード開発の推進役として育成し、継続的な改善サイクルを構築していることが挙げられる。これらの要素が揃うことで、導入効果が最大化されるのだ。

競争優位の実現

ローコードは単なるツールではない。中小企業が大企業と対等に競争できる武器であり、むしろ機動力を活かして大企業を上回る成果を生み出せる可能性を秘めている。従来のシステム開発では不可能だった「現場主導のデジタル化」が実現し、真の意味でのDX推進が可能となる。重要なのは、完璧を求めすぎずに、まず一歩を踏み出すことだ。小さな成功体験から始めて、徐々に範囲を拡大していけば、必ず大きな成果につながる。

まとめ

中小企業にとってローコードは、限られた予算と人材でも効果的なシステム開発を実現できる革新的なソリューションである。コスト削減、開発期間短縮、現場主導の改善という三つの大きなメリットを活用し、段階的なアプローチで導入を進めることが成功の鍵となる。デジタル変革は大企業だけの特権ではないのだ。

続きを見る >

Power Platform導入の注意点

業務変革の実現

Microsoft Power Platformは、Power BI、Power Apps、Power Automate、Power Pagesなどの複数のサービスで構成される統合プラットフォームである。ローコード・ノーコードでアプリ開発やデータ分析、業務自動化が可能になり、企業のDX推進において重要な役割を果たしている。専門的なプログラミング知識がなくても、業務担当者が直接システムを構築できる革新的なソリューションとして注目されている。

導入前の課題

Power Platform導入を成功させるには、事前の課題整理が不可欠である。まず組織内のITリテラシーレベルを把握し、適切な教育体制を構築する必要がある。また、既存システムとの連携方法や、データガバナンスの方針を明確にしておくことも重要である。さらに、開発したアプリやフローの管理・運用体制、セキュリティポリシーの策定、ライセンス管理の仕組みも事前に検討しておく必要がある。これらの準備不足は導入後の混乱を招く可能性がある。

セキュリティリスク

Power Platformの手軽さは、一方で「野良アプリ」や「シャドーIT」のリスクを生み出す。業務担当者が独自にアプリを開発し、適切な管理なしに運用されるケースが増加している。これにより、機密データの不適切な取り扱いや、セキュリティホールの発生、システム全体の統制が取れなくなる問題が生じる。また、外部サービスとの不適切な連携により、データ漏洩のリスクも高まる。組織全体でのガバナンス体制確立と、定期的な監査・レビューの仕組みが必要不可欠である。適切なアクセス権限管理とデータ分類も重要な対策となる。

成功の戦略

Power Platform導入を成功させるには、段階的なアプローチが効果的である。まず小規模なパイロットプロジェクトから始め、成功事例を積み重ねながら組織全体への展開を図る。この過程で、社内のベストプラクティスを蓄積し、標準化されたテンプレートやガイドラインを整備することが重要である。また、継続的な教育プログラムの実施、専門チームによるサポート体制の構築、定期的な効果測定と改善サイクルの確立も欠かせない。技術的な側面だけでなく、組織文化の変革も視野に入れた長期的な取り組みが成功の鍵となる。

まとめ

Power Platform導入は大きな可能性を秘めているが、適切な準備と計画なしには失敗のリスクも高まる。セキュリティとガバナンスの確立、段階的な導入アプローチ、継続的な教育と改善が成功の要件である。組織全体での取り組みが不可欠である。

続きを見る >