QCDの死角

失敗の正体

システムの失敗は見えないことがある。ブラックボックスであるがゆえに隠せてしまうからである。失敗かどうかの線引きができないところがシステム構築プロジェクトの難しいところである。

エンジニアの真実

もしかしたら、エンジニアが都合の悪いことは隠していることがあるかもしれない。しかし、決めつけてしまうとエンジニアはへそを曲げてしまう可能性がある。隠しているつもりはなくても隠れていることもある。

成功の境界

失敗の線引きは、納期が遅れることであろうか。バグが多いということであろうか。実は、状況によって一概に言えないのである。QCDという言葉があるが、品質と費用と納期のバランスを上手にとったとしても成功か失敗か、すぐにはわからないのがシステムという無形物である。

コスパの本質

コスパという言葉があるが、かけるコストに対して、どれだけのパフォーマンスが出せるかが問題となる。システム開発では、コストからやりたいことを計算するのではなく、やりたいことを明確にしたうえで、コスト内でリッチ度合いを調節することが重要である。

まとめ

システム開発においては、失敗が見えにくいため、失敗しないように見えるのかもしれない。失敗しないことは、成功であるということでもない。時間が経つにつれて失敗を感じることもあり得るのである。

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開発費用値下げの危険性

開発手法の選択基準

大がかりなシステム開発においては、ウォーターフォールモデルという開発手法がとられ、設計書などのドキュメント類も整理してから、プログラミングへ着手する。逆に中小規模なシステム開発においては、アジャイル開発と呼ばれ、プログラミングをしながらシステム開発が進められたり、ドキュメント類は簡易にして、プログラミング工程へ着手するといった方法がとられる。状況に応じて開発手法は使い分ける必要がある。

設計書の必要と課題

建築では図面なく建物を建てることはないが、中小規模のシステムについては簡単な概要だけでシステムの開発ができてしまう。もちろん設計書をしっかりと書いて、要件を詰めてシステム開発を進めることができれば、トラブルもなくていいのではないかと言われる。しかし、設計書を作成するにはシステムをプログラミングすることと同じくらい費用が掛かる。

設計書の粒度と要因

中小規模のシステム開発において設計書が簡易になってしまう理由は、ユーザー側や発注側の予算が乏しいという理由がある。建築のパターンの場合は、法律によって作成しなければならない図面や、施主から同意をもらうべき書類などが決められている。システム開発には法的に作成しなければならない書類が明確にされているわけではないため、この粒度が各社・各エンジニアによりバラツキが発生する。

文書管理の現状

中小規模のシステム開発において、最悪の場合は設計書がないケースもある。小さなプロジェクトの場合は予算も少なく特にドキュメント類がないが多くある。あるいは、システムはアップデートされ続けているのにドキュメントはアップデートされていなかったり、ひどい場合にはシステム保守ベンダーが紛失している場合もある。

まとめ

システム開発に時間がかかる理由は、設計書から作成することでプログラミング作業の2倍以上の時間がかかると言われる。いわゆる動作検証の工程まで入れるとプログラミング作業の3倍程度は時間がかかる。また、システム開発はほとんどが人件費である場合が多く、かかる時間に応じて費用が上がる。つまり、非エンジニアが単純に開発費用を値切ると、プログラミング以外の重要な情報を削っていくことになる。

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システム開発の混迷

営業依存の弊害

業務システムがうまくいかないのはベンダーやSEの問題だけではない。SEを取り巻く環境もシステム開発には重要である。業務システム開発を依頼するベンダーであれば営業担当者が挟まる。日本の縦割り社会の中で営業担当者は非エンジニアである場合が多く、プロジェクトの成功が目的ではない場合がある。

役割の細分化

SEをプロジェクトマネージャーとしている場合も注意が必要である。日本ではシステムエンジニアは細分化されておらず、建築でいうと参加者の全員が職人という扱いであることが多い。システムに関わる人全員がSEとしてしまっている間違いである。

開発の本質

SEやベンダーのプロジェクトマネージャーはそれ自体がプロジェクトと考えていることも多く、ビジネスとしてのプロジェクトとして捉えることができていないことがある。本来はビジネスが中心にあって、その中に業務システムが位置するはずである。それが見えているか否かで、業務システム開発の成功の確率は変わるのである。

相互理解

逆に、システムのことはSEに任せているというような場合も注意が必要である。システムのプロジェクトを経験したことがある、というだけでは、システムに関連するプロジェクトを成功させるのは困難である可能性が高い。プログラミングの経験がなければ、SEやベンダーが持つ心境を察することができないからである。最も重要なことはシステム導入時のイメージである。

まとめ

欧米では当たり前のように、間接的に関与する売上や利益の向上を管掌する部門や役職があるが、日本では良くも悪くもロジカルであり、数字がなければ行動に移せない厳密なルールがある。

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野良アプリは排除すべきか?

「便利」の裏にある現場IT

シャドーITとは、企業の情報システム部門が認知・管理していない状態で、現場の判断によって導入・利用されるIT資源を指す。具体例としては、LINEやGoogleドライブ、Excelマクロなど、日常業務の中で自然発生的に使われるツールが挙げられる。これは企業としての統制外にある一方、現場の即応性や利便性を追求した工夫の結果でもあり、単なるルール違反と一括りにはできない。ゆえに、これを「排除すべき野良アプリ」として扱うことが妥当かどうか、慎重な見極めが必要である。

IT部門を飛び越える理由

現場がシャドーITを使う背景には、既存システムの使い勝手の悪さや、IT部門の対応の遅さといった事情がある。業務は待ってくれない以上、迅速な判断や情報共有のために、現場が自ら使いやすいツールを選ぶのは自然な流れである。たとえば、社内の共有フォルダではなくGoogleドライブを使ったり、煩雑な申請フローをExcelマクロで簡素化したりといった工夫は、業務効率の向上に寄与している。現場がスピードと柔軟性を求める限り、IT部門の枠組みに収まらないツール活用は今後も続くはずだ。

シャドーITのリスク

便利な一方で、シャドーITには深刻なリスクも存在する。まず、セキュリティが担保されていないツールの使用は、情報漏洩やマルウェア感染といったリスクを高める。また、IT部門の管理外にあるため、データの一元管理ができず、連携の取れないシステムが乱立することで、かえって非効率になることもある。最悪の場合、コンプライアンス違反や内部統制の崩壊を引き起こす可能性も否定できない。利便性の裏には常にリスクが潜んでいるという現実を直視する必要がある。

市民開発と再定義

ただし、シャドーITの存在は、現場が自らITを活用しようとする前向きな姿勢の表れでもある。近年ではDXの進展に伴い、「市民開発」や「ローコード開発」など、現場主導のIT活用が注目を集めている。従来は否定されてきたシャドーITも、企業変革の一端を担う可能性を秘めている。IT部門がすべてを統制するのではなく、現場と協力しつつガバナンスを効かせる視点に立てば、シャドーITは排除すべき“野良”ではなく、むしろ育てるべき“創造”として再定義できるはずだ。

まとめ

現場の柔軟性と全社最適を両立させるには、両者を理解した経営の舵取りが欠かせない。「排除」ではなく「共存」の設計に踏み出すことこそが、企業のDXを推進するための鍵となる。

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