開発費用値下げの危険性

開発手法の選択基準

大がかりなシステム開発においては、ウォーターフォールモデルという開発手法がとられ、設計書などのドキュメント類も整理してから、プログラミングへ着手する。逆に中小規模なシステム開発においては、アジャイル開発と呼ばれ、プログラミングをしながらシステム開発が進められたり、ドキュメント類は簡易にして、プログラミング工程へ着手するといった方法がとられる。状況に応じて開発手法は使い分ける必要がある。

設計書の必要と課題

建築では図面なく建物を建てることはないが、中小規模のシステムについては簡単な概要だけでシステムの開発ができてしまう。もちろん設計書をしっかりと書いて、要件を詰めてシステム開発を進めることができれば、トラブルもなくていいのではないかと言われる。しかし、設計書を作成するにはシステムをプログラミングすることと同じくらい費用が掛かる。

設計書の粒度と要因

中小規模のシステム開発において設計書が簡易になってしまう理由は、ユーザー側や発注側の予算が乏しいという理由がある。建築のパターンの場合は、法律によって作成しなければならない図面や、施主から同意をもらうべき書類などが決められている。システム開発には法的に作成しなければならない書類が明確にされているわけではないため、この粒度が各社・各エンジニアによりバラツキが発生する。

文書管理の現状

中小規模のシステム開発において、最悪の場合は設計書がないケースもある。小さなプロジェクトの場合は予算も少なく特にドキュメント類がないが多くある。あるいは、システムはアップデートされ続けているのにドキュメントはアップデートされていなかったり、ひどい場合にはシステム保守ベンダーが紛失している場合もある。

まとめ

システム開発に時間がかかる理由は、設計書から作成することでプログラミング作業の2倍以上の時間がかかると言われる。いわゆる動作検証の工程まで入れるとプログラミング作業の3倍程度は時間がかかる。また、システム開発はほとんどが人件費である場合が多く、かかる時間に応じて費用が上がる。つまり、非エンジニアが単純に開発費用を値切ると、プログラミング以外の重要な情報を削っていくことになる。

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なぜベトナムはERPシステム開発に向いているか

ベトナムは、ERPシステムの開発を行うのに適した場所と言えます。特に、日本企業が自社の生産拠点や流通拠点をベトナムに持っている場合や、ERPシステムが過去に作成したwebベースのものである場合は特に向いています。ここでは、その理由について解説します。


ベトナムの市場理解と製造業との親和性

ERPは業務に直結したシステムであるため、業務理解と市場の理解が欠かせません。ベトナムを生産拠点にしていたり、ベトナム市場に製品を販売している日本企業は多いため、そのような日本企業はベトナムの物流や製造現場に慣れているからです。ベトナムの市場理解と製造業との連携により、ERPシステムの在庫管理など、製造業に特化した機能を効果的に開発することができます。これにより、生産管理や物流効率の向上を実現し、ビジネスの競争力を強化することができるでしょう。

ベトナムにおける既存の知識と日本語通訳者の能力

トナム人の日本語通訳者の能力も向上しており、生産や流通に関わる日本語も習得しています。これにより、ERPシステム開発プロジェクトの効率性が向上し、品質の高い成果物を生み出すことができます。

ベトナム国内には、日本企業の製造や流通、決済に関する知識が蓄積されています。日本企業の進出が主に製造業から始まったため、ベトナムではこれまでに日本独自の慣習や用語についての理解が深まってきました。このような環境下でERPシステムを開発することで、ベトナムとの意思疎通がスムーズに行われ、開発段階での要件の理解に対しての円滑なコミュニケーションが可能です。ベ

ベトナムのオフショア開発の特質と既存システムの改善

ベトナムのソフトウェア業界は、オフショア開発からスタートし、成熟した実装能力を持っています。しかし、そのような経緯のために上流工程については苦手です。要件定義や仕様作成の段階からベトナムに丸投げしてしまうのはあまり良いこととは言えません。その部分は日本側で行い、実装段階をベトナムで行なうのが良いでしょう。

特に20年前からのWebベースのERPシステムのリプレースや改善をする場合は、ベトナムは適切な場所と言えます。過去に作成された既存のシステムは現在の技術やセキュリティ基準に合致していない場合があります。しかし、ベトナムの開発者が現代的な技術を使ってUIやUXの改善に取り組むことで、既存システムの現代化やセキュリティの強化が可能です。 具体的には、DBはそのままにして、古い技術で作られているフロントエンド部分をリプレースすると言ったプロジェクトが良いでしょう。

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AIで何ができるのか

AI vs 人間

AIは人間を超えるのか?などの質問をされることがよくある。シンギュラリティと呼ばれているが、超える超えないの単一線上で比較できるものではないと考える。たとえば、計算の速さだけでいうと人間よりも、はるかに早いと言える。

AI導入の両面性

とにかく労働人口の減少によって、機械化やAI化が急がれていると思う。すでに、画像作成や文章作成などは置き換わっている事例も多くみられるようになった。そんな中で、よくあるのが「AIで何かできませんか?」という問い合わせである。

AI時代のDX

DXという概念にも通ずる話だが、デジタル化するだけでは、いわゆるデジタル変革にはならない。ペーパーレス化ってやつだ。同じように、AIを使うことを目的としてしまうと業務に対して便益がない場合も多いようだ。したがって、AIを利用するということをDXと定義するのであれば、日常業務を整理して、どこをAIに任せるのかを検討することが大切である。

AI活用の極意

AIにも得手不得手があり、計算はもちろん得意だが、質問の仕方や指示の仕方で活用レベルは大きく変わる。プロンプトと呼ばれるものはコピーして使えるが、AIを活用しきろうとするならば、自分でプロンプトを考えれる必要がある。つまり、現時点では賢いAIなのではなく、使う側が上手に使わないとならない。

まとめ

AIの使いどころについて、多くは無理やり使おうとするため、AIを活用する場面でないことも多くある。また、ユーザー企業に関わらずシステム会社でもAIの活用は進んでおり、画像の生成やプログラミングの一部はすでに人間が行わなくてもよい段階にある。これから先もこれは加速することだろう。

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マクロからPower Appsへ

ゾンビファイル

今から十数年前に作られたExcelやAccessでのマクロプログラムが今もなお残り続けている。表計算ソフトと呼ばれるデータベースに似たツールを背景にユーザーインターフェースやロジックを付け足したものである。もはやゾンビファイルと言っても過言ではない。これらのシステムは当初の目的を果たしていても、時代の変化とともに保守性や拡張性に大きな課題を抱えるようになっている。

作成者不明問題

社内に残る通称「マクロ」は、今はいない人が作成していたり、一部の人が独自に作ったものであることが多くある。作った人がいる場合はまだしも、退職している場合はその中のプログラムも見ることができないので、いつ止まるか分からないシステムを業務の中心で使い続けていくことになる。このような状況では、エラーが発生した際の対処法が不明で、業務継続に深刻なリスクをもたらす可能性がある。

市民開発解決法

ブラックボックス化したマクロを情報システム部に解決をお願いするのではなく、市民開発にて解決するには多少のコツが必要になる。ポイントは完全にブラックボックス化している状態や、何から手を付けていいか分からない状態のマクロ群は、残念ながらまずは専門家に情報の整理を依頼することが必要になるだろう。自社だけでの解決を試みる前に、適切な専門知識を持つパートナーとの連携を検討することが成功への近道となる。

専門家活用法

専門家に依頼したほうがいい理由として、マクロファイルの解析だけを切り離した作業としてしまうと、その後の市民開発へ繋ぎにくくなるからである。マクロファイルのインプット/アウトプットを解析した上で、それをどのように今後の市民開発のベース作りに活かすのか。ITコンサルやシステム開発会社の腕の見せどころである。単純な解析作業ではなく、将来的な発展性を見据えた戦略的なアプローチが求められる領域といえるだろう。

まとめ

ExcelやAccessはMicrosoft社の製品であるので、そのままMicrosoft社が提供するPower PlatformやPower Appsへの移行がスマートである。間違ってもマクロをスクラッチ開発でのWebシステムに移管すべきではない。親和性の問題や閲覧性などに課題がのこることが多いようである。

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