なぜベトナムはERPシステム開発に向いているか

ベトナムは、ERPシステムの開発を行うのに適した場所と言えます。特に、日本企業が自社の生産拠点や流通拠点をベトナムに持っている場合や、ERPシステムが過去に作成したwebベースのものである場合は特に向いています。ここでは、その理由について解説します。


ベトナムの市場理解と製造業との親和性

ERPは業務に直結したシステムであるため、業務理解と市場の理解が欠かせません。ベトナムを生産拠点にしていたり、ベトナム市場に製品を販売している日本企業は多いため、そのような日本企業はベトナムの物流や製造現場に慣れているからです。ベトナムの市場理解と製造業との連携により、ERPシステムの在庫管理など、製造業に特化した機能を効果的に開発することができます。これにより、生産管理や物流効率の向上を実現し、ビジネスの競争力を強化することができるでしょう。

ベトナムにおける既存の知識と日本語通訳者の能力

トナム人の日本語通訳者の能力も向上しており、生産や流通に関わる日本語も習得しています。これにより、ERPシステム開発プロジェクトの効率性が向上し、品質の高い成果物を生み出すことができます。

ベトナム国内には、日本企業の製造や流通、決済に関する知識が蓄積されています。日本企業の進出が主に製造業から始まったため、ベトナムではこれまでに日本独自の慣習や用語についての理解が深まってきました。このような環境下でERPシステムを開発することで、ベトナムとの意思疎通がスムーズに行われ、開発段階での要件の理解に対しての円滑なコミュニケーションが可能です。ベ

ベトナムのオフショア開発の特質と既存システムの改善

ベトナムのソフトウェア業界は、オフショア開発からスタートし、成熟した実装能力を持っています。しかし、そのような経緯のために上流工程については苦手です。要件定義や仕様作成の段階からベトナムに丸投げしてしまうのはあまり良いこととは言えません。その部分は日本側で行い、実装段階をベトナムで行なうのが良いでしょう。

特に20年前からのWebベースのERPシステムのリプレースや改善をする場合は、ベトナムは適切な場所と言えます。過去に作成された既存のシステムは現在の技術やセキュリティ基準に合致していない場合があります。しかし、ベトナムの開発者が現代的な技術を使ってUIやUXの改善に取り組むことで、既存システムの現代化やセキュリティの強化が可能です。 具体的には、DBはそのままにして、古い技術で作られているフロントエンド部分をリプレースすると言ったプロジェクトが良いでしょう。

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リーダーの多忙による弊害

危険な繁忙化

なぜか忙しくしているPMやリーダーとなるSEがいれば危険信号である。リーダーが忙しくなると全体的な最適化や効率的な運用ができていない可能性がある。結果として、無駄に費用がかかったり、技術的負債が大きくなったりする。

役割分担の歪み

システムのユーザー側から見ると、SEという見え方しかしないと思われるが、実際はシステムの運用や開発には細かな作業分担が発生する。この作業分担ができていない場合は窓口のSEが余計な作業を行っている可能性がある。役割分担の不均衡がもたらす忙しさではなく、まったく仕事としてやらなくてもよいような事に時間を使っていて忙しい場合がある。

プロセスの確立

たとえば、プログラムが解析できる人をリーダーとしてしまうと、開発者に手取り足取り指示をしてしまうことがある。もし、リーダーがプログラムレビューなどの作業や、開発者にプログラム上の細かな指示をしている場合は注意が必要である。何を基準にプログラムレビューや指示を行うのか、という仕事を見える化し、仕組化することがリーダーの務めである。

俯瞰的視点

木を見て森を見ずという言葉があるように、リーダーとなる人は指針を作ったりメンバーをプロジェクト成功へ導く役割がある。リーダーが開発メンバーと同じように木ばかりを見ているようであれば、森を見る人が非エンジニアであるユーザー側となってしまうことが考えられる。

まとめ

誰が森を見るのか、リーダーやPMが常に忙しそうにしている場合は、何に時間を使っているのか調査する必要がある。実はここがボトルネックになっていてプロジェクトの進行が思うようにいかなかったり、頻繁にリスケが発生していることも多くある。しかし、これは本人にヒアリングするだけでは表面化しないため、ユーザー側の担当者やプログラマーなどの周辺人員から浮き彫りにすることが望ましい。

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ベトナムオフショア開発におけるブリッジエンジニアの重要性とその役割

オフショア開発の新たな展開とブリッジエンジニアの必要性

現在、日本企業がベトナムを含む海外の開発会社と協力してオフショア開発を行う流れが増えています。過去10年間で、ベトナム自体が珍しい存在ではなくなり、海外の開発会社がプロジェクトに参加するのは当たり前の状況となりました。 しかし、この状況下で単に「人件費の安いベトナム」に発注するというコストダウンの視点では、現在の状況には適していないのが実情です。 もしコストカットが目的であれば、システム開発ではなく、比較的単純で反復的な業務を対象とするBPOを検討すべきです。

言語と文化の壁を乗り越えるブリッジエンジニアの役割

それでは、BPOではないシステム開発においてはどのようなアプローチが求められるのでしょうか?その答えは、ブリッジエンジニアを用意することです。ブリッジエンジニアは、日本語とベトナム語の両方を使いこなせるソフトウェアエンジニアであり、コミュニケーターとも称されます。彼らは言葉の問題だけでなく、仕事のやり方や文化の違いによる課題をブリッジする必要があります。

例えば、日本のソフトウェア開発では受託開発が一般的であり、開発プロジェクトの進捗管理においては報連相が重視されます。また、ボトムアップ型のアプローチが好まれ、開発現場の個々の創意工夫や意見が重要視されます。しかし、ベトナムにおける受託開発は成果物の完成を約束する契約であり(日本の受託開発も契約上はこうなのですが)、成果物の進捗について日本の発注元から頻繁に報告を求められることに対してベトナムの開発者は反発を感じることがあります。また、指示命令がはっきりしているベトナムの組織では、開発現場において意見を求めつつも、その結果に責任を開発現場に求める日本のマネジメントスタイルは、無責任に映ることもあるかもしれません。

ブリッジエンジニアの役割とスキル要件

こうした課題を乗り越えるためには、ブリッジエンジニアの存在が不可欠です。彼らは単なる言語の通訳だけでなく、両国の開発文化の違いを理解し、適切なコミュニケーションを取る能力を持っています。ブリッジエンジニアは、日本のソフトウェア開発の特徴や要件を正確に把握し、ベトナムの開発者に伝えることで、円滑な連携を実現します。彼らは言葉や文化の壁を乗り越え、双方の開発チームを結びつけ、プロジェクトの成果を最大化する役割を果たすのです。

ブリッジエンジニアには、ソフトウェア開発の知識や技術力に加えて、優れたコミュニケーション能力や対人スキルが求められます。彼らは単に言葉を通訳するだけでなく、双方の文化や仕事のやり方を理解し、適切な形で情報を伝える必要があります。また、柔軟性と問題解決能力も重要です。彼らは状況に応じて適切な対応を取り、課題を解決するための努力を惜しまない必要があります。

結論

ベトナムオフショア開発において、ブリッジエンジニアは非常に重要な存在です。彼らの存在は単なるコストダウンだけでなく、効果的なシステム開発を実現するために不可欠です。ただし、ブリッジエンジニアの人件費は安くなく、市場には数が限られています。多くの日系開発企業が、優れたブリッジエンジニアを最重要の人的資源として確保しているためです。そのため、ベトナムオフショア開発は必ずしも安価ではありません。ブリッジエンジニアの重要性を理解し、適切な人材を配置することで、プロジェクトの成功につなげることが求められます。

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オフショア開発の変遷と現状

オフショア開発のコストダウン目的

オフショア開発における主要な目的は、プロジェクトの総コストを削減するために人件費を削減することです。日本の開発者の人件費が高いため、ベトナムの開発者と置き換えることで財務的なコストダウンを実現してきました。ただし、外国に発注するということは、品質の低さと言葉の壁という2つの問題がつねにつきまといます。

内部コストと労働者の負担

人件費の削減は財務上のコストダウン効果を直接的に実現しますが、品質の低さや言葉の壁といった問題は現場の労働時間や精神的な負担として現れる内部コストです。これらの内部コストは労働者に転嫁され、営業側が値引きを行い開発現場の労働に影響を与える仕組みとなっています。オフショア開発に対する開発現場からの評判の悪さは、このような直接的な感覚から生じていると考えられます。

品質の向上と言語の壁

品質の低さや言葉の壁は改善の兆しを見せています。20年前と比較すると、通信手段や開発ツールが進歩しました。チャットやビデオ会議、画面共有などの技術が利用できるようになりました。また、クラウドやソースコードの共有などの管理システムも進化しました。言語の壁も同様で、ベトナムにおける日本語の理解力や日本人における英語の能力は向上しています。さらに、機械翻訳の進歩により、外国語を交えながら技術的な会話が容易になりました。

品質と納期の重要性

オフショア開発において品質と納期は重要な要素です。納期を守り、仕様を満たすことが最終的な評価基準となります。優れた開発チームやツールの活用は重要ですが、納期の達成と仕様の達成が果たされなければ、プロジェクトは失敗となります。

新たなオフショア開発の戦略

オフショア開発におけるコストダウンの戦略は、技術の進歩を活用する方向に進んでいます。開発手法として、ウォーターフォール型ではなくジャイルやOSS的な手法を導入することが求められています。また、国際的な標準的なツールやバージョン管理などの利用も重要です。さらに、コミュニケーションの円滑化も不可欠です。言葉の問題だけでなく、コミュニケーションの円滑化は人間によって担保されます。

オフショア開発の変遷において、品質やコミュニケーションの改善は見られますが、人件費の差によるコストダウンは限界に近づいています。技術の進歩を取り入れた新たな戦略の導入により、より効果的なオフショア開発を実現することができるでしょう。

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