日本の技術人材不足とオフショア開発

セクション1: 日本のソフトウェア開発人材不足の背景

日本のソフトウェア開発業界は50年以上の歴史を持ち、多くの経験豊富なエンジニアが存在します。しかし、現在の日本では開発人材の不足が深刻な問題となっています。この人材不足は、企業が即戦力となるエンジニアを安価で求めるという要望に由来しています。そのため、日本の人材不足はしばしば「即戦力を安く求める欲求」として揶揄されることもありますが、この言い方には一面の真実も含まれています。企業が効率的な開発を行うためには、即戦力のエンジニアが必要なのは当然のことです。

また、この人材不足の問題は、単に日本だけに限ったものではありません。他の海外でも同様の人材不足が起きています。したがって、オフショア開発を検討する際には、都合の良い人材を海外で見つけることができるという考え方は一部正解であり、一部誤解とも言えます。

セクション2: 日本とベトナムのエンジニアの特徴

日本のエンジニアは、特にWeb関連のエンジニアにおいては、1990年代からのキャリアを持つベテランが多く存在します。そのため、文字コードやバイナリ、組み込み技術など、古いOSや低レベルの知識を必要とする開発においては、日本の技術者は強みを持っています。一方、新しいフレームワークや概念の習得には、国民性よりも年齢が影響を与える傾向があります。そのため、ベトナムのエンジニアは若さを活かして新しい技術を素早く学ぶことが得意と言えます。

また、コンピューター業界においては、上流と下流、低レベルと高レベルといった言葉が中立的に使われますが、この意味において日本は低レベル開発に向いており、ベトナムは高レベル開発に向いていると言えます。そのため、バランスの取れたオフショア開発を行うためには、日本のエンジニアのジェネラリスト的な能力とベトナムのエンジニアのスペシャリスト的な能力を組み合わせることが重要です。

セクション3: 日本とベトナムの開発手法の違い

日本のソフトウェア開発では、納期を守るためにウォーターフォール型の開発手法が主流です。アジャイル開発が概念的には取り入れられつつありますが、完全にアジャイルな開発プロセスを採用しているケースはまだまれです。一方、ベトナムのソフトウェア開発は、日本の開発手法と大きく異なるわけではありません。基本的には納期を守るためのウォーターフォール型の手法が一般的ですが、OSSの影響を受けて開発手法が変化しつつあります。

日本の開発現場と比較して、ベトナムの開発手法の利点は、新しいフレームワークや技術の習得において素早い反応性を持つことです。ベトナムのエンジニアは若く、学習意欲が高いため、最新の技術に対する理解が早く、柔軟に対応できるという特徴があります。ただし、ベトナムの開発現場においては、アジャイル開発の完全な導入はまだ一般的ではないことに注意が必要です。

セクション4: 言語の壁以外の考慮すべきポイント

ベトナムのエンジニアを活用する際に言語の壁を乗り越えるためには、円滑なコミュニケーションを図ることが重要です。英語がビジネスコミュニケーションの共通語となっているため、日本の企業がベトナムのエンジニアとのコミュニケーションを円滑に行うためには、英語教育の強化や翻訳ツールの活用などが有効です。また、文化やコミュニケーションスタイルの違いも考慮すべきポイントです。異なる文化背景を持つエンジニア同士が協力する場合、相手の文化に対する理解や尊重が求められます。

セクション5: 成功へのカギはバランスと柔軟性

ベトナムでのソフトウェア開発のオフショアを成功させるためには、日本とベトナムのエンジニアの特長を組み合わせることが重要です。日本のエンジニアはジェネラリストとして幅広い知識と経験を持っており、プロジェクト全体の管理や技術的な統括を担当することが得意です。一方、ベトナムのエンジニアはスペシャリストとして特定の技術に精通しており、新しい技術の習得にも素早く対応できます。

オフショア開発においては、開発現場のバランスと柔軟性が求められます。例えば、日本のエンジニアがジェネラリストとしてプロジェクトを牽引し、ベトナムのエンジニアがスペシャリストとして特定の技術領域を担当する役割分担が効果的です。また、現代的な開発手法を用いることも重要です。ウォーターフォール型の手法に加えてアジャイル開発の一部を取り入れるなど、柔軟に適切な手法を選択することが目的達成(コストダウン実現)へのカギとなります。

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ノーコード・ローコード比較

新たな開発手法

近年、ビジネスのデジタル化が加速する中で、ノーコード・ローコードツールが注目を集めている。従来のシステム開発では専門的なプログラミング知識が必須だったが、これらのツールを使えば、非エンジニアでも直感的な操作でアプリケーションやWebサイトを構築できる。開発期間の短縮やコスト削減が可能になることから、スタートアップから大企業まで幅広く導入が進んでいる。

主要ツール

ノーコードツールの代表例としては、Webサイト構築に強いBubbleやWebflow、業務アプリ開発に適したKintoneやAppSheet、自動化に特化したZapierなどがある。Bubbleは柔軟性が高く複雑な機能も実装可能だが、学習コストはやや高めである。Webflowはデザイン性に優れ、マーケティングサイトに最適だ。Kintoneはデータベース管理に優れ、日本企業での導入実績が豊富で、承認フローなど日本の業務習慣に対応している。一方、ローコードツールではMicrosoft Power AppsがOffice 365との連携に強く、OutSystemsは大規模エンタープライズ向けで基幹システム開発にも対応可能である。料金体系も月額制からユーザー課金制まで多様で、自社の規模に合わせた選択ができる。

両者の違い

ノーコードとローコードの最大の違いは、カスタマイズ性と技術的な介入度である。ノーコードは完全にコード記述なしで開発できる反面、複雑な要件には対応しきれない場合がある。ローコードは基本的な部分は視覚的に構築しつつ、必要に応じてコードを追加できるため、より高度な機能実装が可能だ。選択時のポイントは、開発したいシステムの複雑さ、既存システムとの連携要件、将来的な拡張性、そして社内の技術リソースである。シンプルな業務アプリならノーコード、基幹システム連携が必要ならローコードが適している。

導入のポイント

ノーコード・ローコードツールの導入を成功させるには、いくつかの注意点がある。まず、無料プランで試用し、実際の業務フローに合うか検証することが重要だ。また、ベンダーロックインのリスクを考慮し、データのエクスポート機能やAPI連携の可否を確認すべきである。セキュリティ要件も見逃せない。特に顧客情報を扱う場合は、各ツールのセキュリティ認証やデータ保存場所を確認する必要がある。さらに、導入後の運用体制も計画的に整備し、社内でのツール活用スキルを育成することが、長期的な成功につながる。

まとめ

ノーコード・ローコードツールは、企業のDX推進を加速させる強力な手段である。適切なツールを選定し、自社の課題に合わせて活用することで、開発コストを抑えながらスピーディーにシステムを構築できる。まずは小規模なプロジェクトから始め、成功体験を積み重ねながら展開していくことを勧める。デジタル化の第一歩として、ぜひ検討すべきだろう。

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内製化の成功術

IT報酬の実態

海外と比べて日本のITエンジニアの報酬が低いという記事をよく目にする。それもそのはずで、ハイクラスIT人材は都合のいい「何でも屋」にはならないからである。

導入時の誤解

ユーザー企業やシステムのユーザーは、IT化を行うことで業務が減るという先入観を持っていることがある。システム導入を着手したときの目的を忘れて、その時、その場の課題を優先して都合よくITエンジニアを動かしてしまう。また動くITエンジニアもそこにいたりする。

システムと医療

たとえば、「お腹が痛い」と病院にいって「すぐに切開しよう」とはならないはずだ。このようにシステムにもその他にも色々な条件が絡まり合っている。システムは取り扱う情報量や関連する業務が多く導入に時間がかかる。時間がかかる結果、最初の導入目的を忘れてしまうのである。

真のIT人材価値

ハイクラスIT人材はユーザー側の状況と心理を配慮しつつ、現場のプログラマーの状況と心理を考慮して陣頭指揮できる人材といってもよいだろう。心理というのは物の言い方だけではなく、無形の財産を構築したり業務にフィットさせたりするので、プロジェクトの円滑さが変わるのだ。

まとめ

小手先だけでシステムに関するプロジェクトを推進しようとすると、「言われた通りにやった」という受動的な参加者が増えてしまう。情シスのSIer化を回避するにはITエンジニアを「何でも屋」にさせて疲弊させないことも大切である。開発チームの雰囲気作りも非常に効果がある。

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技術的負債の返済方法

負債の本質

技術的負債には、設計負債やコード負債がある。金銭的な負債であれば借入金やマイナスの表記で数字化できるのだが、技術的負債においては数字化できないことがとても難しい点である。経営に関するほとんどのことは定量化や定性化が可能だが、たとえば企業創業者の発想する「野生の勘」を直接的に数字化できないように技術的負債も一筋縄では見える化しない。

設計時の対策

技術的負債の中でもコード負債については、システム開発の現場からよく発想されるリファクタリングや再構築などを行うことで比較的わかりやすい返済方法となる。知らない人が作ったプログラムや古くなったプログラムのバージョンなど、リスクを表現し対応することができる。何よりも最初の企画設計段階で負債が積みあがりにくい仕組みを考えることが大切である。

高負担な設計

技術的負債の中でも利息の高い負債が設計負債である。単体機能における設計であれば、モジュールごとの再設計によって返済が可能である。しかし、プログラムは複数のモジュールが絡まり合っていることがほとんどなので、複雑なオペになってしまう。また、稼働中のシステムにわざわざ再設計したプログラムを導入するリスクに対して、得れるメリットも少ないので見過ごされがちである。設計能力は例えば、紙というオブジェクトのメソッド(振る舞い)とプロパティ(保持する情報)を聞いて正しい答えが帰ってくれば多少安心であろう。紙の振る舞いは燃えるであり保持する情報は面積などがある。

根本的解決

しかし、技術的負債はこのように目に見えやすい設計負債やコード負債が致命的になることは少なく、やはりその上層でどのような指針に基づいてシステム運用がなされてきたか、また長期視点で一貫したメンテナンスを行うことが必要である。システムの維持には保守費用や運用費用を払っていることが多いと思うが、これだけでは将来の負債を減らしていくことはできない。やはり、鳥の目を持つITコンサルタントやITアナリストなどの役割を持つメンバーが必要である。

まとめ

ITコンサルタントやアナリストは、すぐに利益も生まない、経費を削減するわけでもないといったコストセンターとしてのポジションなので、あまり起用していない中小企業も多いようである。投資に対する効果が見えにくいのは、料理でいう香辛料と同じなのかもしれない。その少しの投資が未来を大きく変えることになる。IT技術は日進月歩で発展するからである。

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